また溝上部長らはフェリチンと、値が高いほど糖尿病になりやすい「インスリン抵抗性」の関係を調べた結果を、今春発表した。20~60代の男女約500人を対象に、フェリチンで3グループに分けて比較、男性は多いグループほどインスリン抵抗性が高かった。これも女性では差がみられなかった。

遺伝子に損傷を与える酸化ストレスとも関係がみられる。別の研究で「フェリチンが多いほど酸化ストレスが多いという、きれいな右肩上がりの傾向になった」と溝上部長は話す。鉄分は不足でも過剰でも様々な悪影響の可能性があり「バランスが難しい栄養素の一つだ」と指摘する。

■基本は食事で取る

国立健康・栄養研究所の梅垣敬三・情報センター長は「不足している人が鉄分を摂取することで有益な効果があるのは明確」としながらも、過剰摂取への注意も促す。通常の食事だけならほとんど心配ないが、治療用の鉄分の服用で過剰になる場合がある。

特に小児や乳児が医療関係者の助言を受けずに治療用鉄分やサプリメントから摂取すると、急性鉄中毒になる可能性があるという。これは重度の臓器障害や死につながる恐れがある病気だ。大人がのんでいるものを誤って子供がのんでしまう例があるという。

また「消費者が自己判断して鉄分を治療目的で摂取すると、過剰になる可能性がある」と梅垣センター長は指摘する。例えば自分は貧血なので鉄分不足と判断し、病院に行かないまま摂取を始めるケースだ。貧血の原因は摂取不足とは限らず、潰瘍などからの出血の場合もある。自己判断では、おおもとの病気の受診・治療の機会を逃す恐れがある点でも問題だ。

「基本は食事から取ること」(梅垣センター長)。食べ物の中の鉄分は肉などに含まれるヘム鉄と植物性食品に含まれる非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が吸収率が2~3倍高い。またビタミンCは鉄分の吸収を促し、お茶に含まれるタンニンなどは逆に阻害する。

細かく考えると難しいが、いろいろな食材から取ることが大切という。医師や薬剤師、管理栄養士など健康医療関係の専門職から鉄分不足といわれたら、助言にしたがい食事を改善したり、サプリメントを摂取したりするとよいだろう。

(編集委員 賀川雅人)

ひとくちガイド
《ホームページ》
◆鉄分などの栄養素を詳しく知るには
国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報
(https://hfnet.nih.go.jp/)
◆サプリメントや特定保健用食品などを説明
厚生労働省「e-ヘルスネット」の食品の機能と健康コーナー
(http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-01-001.html)

[日本経済新聞朝刊2013年10月27日付]

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