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優しさと郷愁のロードムービー ペイン「ネブラスカ」

カンヌ映画祭リポート2013(14)

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NIKKEI STYLE

アレクサンダー・ペイン監督のロードムービーはいつも優しい。うだつのあがらない2人の中年男の自分探しの旅を追う「サイドウェイ」(2004年)、先祖伝来のハワイの土地を売ろうとしている男が家族の絆を再発見する「ファミリーツリー」(11年)。決して立派でない人間の生き方を、どこか温かく見守っているところがある。

23日にコンペに登場した「ネブラスカ」はそんな優しさに加えて、モノクロの画面ににじみ出る古きアメリカへの郷愁にあふれたロードムービーだった。

認知症をわずらう父親と息子の旅である。モンタナに住む父親(ブルース・ダーン)は、当たったと思い込んでいる宝くじの換金のためにネブラスカに行こうとして、たびたび家を抜け出す。家族は父を老人ホームに入れようと話し合い、息子の1人(ウィル・フォーテ)がまず宝くじの外れをわからせるために、父と車でネブラスカに向かう。途中、父のけがのため、2人は父の生まれた小さな町に滞在。そこで自らの過去と再び出合う……。

何気ない場面にノスタルジーが漂うのは、モノクロ画面に映し出される身ぶりや風景にアメリカを巡る映画的記憶があるからだろうか。

父の頭の傷を医者が黒い糸で縫い合わせる手つきは、西部劇の手荒い医者のしぐさを思わせる。車で走る大平原には牛が点在し、わらのたばが点在する。舗装していない道に、もうもうとした砂ぼこりがたつ。

ダイナーでみんながこちらを向いてビール片手にテレビでフットボールを見ている光景もいかにもアメリカの田舎町の退屈な午後だ。おじと太った2人のいとこは何をして暮らしているのか。そのけだるさがえらくリアルなのだ。

ネブラスカはペイン監督自身の故郷であり、「アバウト・シュミット」(02年)など多くの作品をここで撮っている。事件らしい事件はなく、旅は円環を描いていく。故郷への思いが色濃くにじむロードムービーだ。

サスペンスとしての「ミヒャエル・コールハース」

フランスのアルノー・デ・パリエール監督「ミヒャエル・コールハース」は19世紀のドイツの作家ハインリヒ・フォン・クライストの小説「ミヒャエル・コールハースの運命」の映画化だ。23日にプレス向けに上映された。

舞台は16世紀のドイツ。善良な市民コールハースが悪徳領主の横暴に抗議し、公正な裁きを求めるが、為政者に受け入れられず、法外な行動に出る話である。正義感にあふれながら、あまりに理不尽な仕打ちに、ついに怒りを爆発させるコールハースを、マッツ・ミケルセンが好演している。

2頭の黒馬をだまし取られ、馬に付き添った下僕が虐待され、上奏しようとした妻を殺される。まったく悪いことをしていないのに、なんでこんなひどい仕打ちにあうのか。コールハースは最後まで、法の厳正な執行を主張し、馬2頭の返還を求めるが……。

コールハースが直面する不条理には、現代社会に通じるものがある。巨大なシステムを前にした個人の無力感。これをどう映画にするのか、カンヌに来る前から期待していた。

映画は挑戦的な方法論に貫かれていた。歴史劇にありがちなナレーションや説明的な芝居を排し、視点をコールハースの行動に絞る。コールハースが見たもの、したこと、されたことしか描かない。回想シーンもない。ストイックなまでに抑制された映画的叙述で、コールハースの心理だけをあぶりだす。

原作は「或る古記録より」との副題の通り、中世の古い記録を元に、後世の語り手が客観的に物語る形式を取っている。だから都で何があったのか、なぜコールハースの訴えが却下されるのか、どういう政治的な駆け引きがあったのかも説明される。

ところが映画はそんな説明はしない。コールハースの身に降りかかることだけで、すべてを語っていく。そこには現実の人生と同じようなスリルがある。サスペンスなのである。理不尽はコールハースを突然襲うのだ。

不幸な正義派ミケルセンの姿は、昨年のコンペに出品されたトマス・ヴィンターベア監督「偽りなき者」でのミケルセンと重なる。ヴィンターベアも説明や回想を一切排して、ただ降りかかる不幸を即物的に描き続けていた。

映像で語り切ろうとする野心的な映画だ。ただ肝心の映像そのものにいまひとつ力がないのが残念だった。

◇            ◇

会期終盤の木曜日ともなると、多くのバイヤーがカンヌを去る。混雑していたクロワゼット通りもずいぶん歩きやすくなった。残っているのはジャーナリストと批評家ばかり。業界誌もめっきり薄くなった。

コンペは、ジェームス・グレイ、そしてポランスキー、ジャームッシュという巨匠の作品を残すだけ。パルムドールをはじめとする各賞は26日19時(日本時間27日午前2時)に始まる閉会式で発表される。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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