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グローバル時代の「甘い生活」 ソレンティーノ、ローマ描く

カンヌ映画祭リポート2013(10)

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NIKKEI STYLE

パオロ・ソレンティーノ監督はまだ42歳ながら、新作を出すたびにカンヌのコンペに選ばれるイタリアの気鋭の映画作家だ。ジュリオ・アンドレオッチ元首相を描いた政治ドラマ「イル・ディーヴォ・魔王と呼ばれた男」(2008年)で審査員賞を受け、「きっとここが帰る場所」(11年)はショーン・ペンを主演に迎え、米国で撮った。

20日にプレス向けに上映されたコンペ作品「ザ・グレート・ビューティー」は再びイタリアに戻り、舞台をローマの中心部に据え、享楽的な生活にふける裕福な作家を描く。そう。巨匠フェデリコ・フェリーニの「甘い生活」(1960年)を思わせる設定なのだ。

主人公は若くして成功を収め、65歳になった今は新作も書かずに優雅に暮らしている作家(トニ・セルヴィッロ)。テラスの目の前にコロッセオを望む大邸宅に住んでいる。夜ごと開かれる狂騒的なパーティー。「上流社会の王様になりたかった」とうそぶく作家が仕掛ける見せ物は尋常でない退廃ぶりだ。

陰毛をソ連国旗に染め上げた女が滑走路のような舞台を走り、ローマの水道橋に激突する。幼い少女が絵の具まみれになってアクションペインティングを繰り広げる。10日間もベッドの上でキスをし続ける若い男女。テラスを所狭しと埋めるフラミンゴの群れ。古代ローマの遺跡にキリンが現れるマジック。

女たらしの作家は目の前の女とかつて寝たかどうかも定かに覚えていない。老齢の尼僧に「もう本は書かないのか」と問われると、「偉大な美を探しているんです」と答える。

そんな作家の心をかき乱すのは、かつて妊娠させた女エリザの死だ。作家はひざを抱えて泣き、若き日のエリザの幻を見る。「あなたに見せたいものがあるの」と言って、月明かりの下で胸をはだけてみせたエリザを。

「名作は見られるべきものであって、模倣されるべきものではない」と語るソレンティーノだが、同じローマを描いた「甘い生活」や「フェリーニのローマ」(72年)の影響からは逃れられなかった。「それらの映画の刻印を否定しないし、それらの映画がこの映画を導いてくれた。私はただ、それらの映画が私を正しい方向に導いてくれたらよいと思った」と打ち明ける。

「甘い生活」が描く50年代後半の時代はまだ確固たる上流階級があったろうし、そのモラルの崩壊や退廃ぶりはスキャンダラスであったろう。翻って2010年代の今はどうなのだろう?

イタリアの階級社会に疎い記者は映画から想像するしかないのだが、半世紀以上前のフェリーニ作品のようなズシリとした重みは、ソレンティーノの新作からは感じられない。

ただ、歴史の重みに押しつぶされそうなローマの街に漂う死のにおいは、グローバル化が進んだ今も変わらないのではないだろうか。映画の冒頭、古代遺跡の前でくらくらとして気を失う日本人観光客の描写はそれを雄弁に物語る。これはグローバル時代の「甘い生活」なのだ。

好評の是枝作品、受賞期待高まる

21日までにコンペ20作品中、13作品がプレス向けに上映された。すでに触れた作品のほかに面白かったのは、チャドのマハマト=サレ・ハルーン監督「グリグリ」だ。

主人公は小児まひによる脚の障害を抱えながら、ダンサーを目指す青年グリグリ。父が病に倒れたために、金が必要になったグリグリは、石油の横流しに手を染める。そのためにマフィアに追われることになったグリグリは恋人の実家へと逃れる。

チャド社会の現実とその裏面を映し出す社会派作品だが、何よりアクション映画として優れている。グリグリの不自由な脚、切れのいいダンス、突然襲ってくる激しい暴力、容赦なく追ってくる車、そして虐げられた者たちの逆襲。アフリカの明るい太陽の下で繰り広げられるフィルムノワール(犯罪映画)とも呼ぶべき作品で、すべてをアクションで語っているのが潔い。

オランダのアレックス・ファン・ヴァーメルダム監督「ボーグマン」は、裕福な芸術家一家の暮らしが、正体不明の流れ者たちに侵されていくさまを変態的に描いた。フランスのヴァレリア・ブルーニ・テデスキ監督「イタリアの邸宅」は、かつて裕福だった家族の没落と崩壊を、40代の独身娘の新しい家族への希求と重ね合わせる。ともに映画作家の個性が光っていた。

コンペの前半戦を終えて批評家の評価が高いのはコーエン兄弟、ジャ・ジャンクー、アスガ-・ファルハディの各作品。是枝作品にも「繊細で詩的なカメラ」「是枝は彼の家族の肖像を普遍的な映像で見せることを知っている」(ルモンド紙)と好意的な評が出た。上映時の盛り上がりがすばらしく「スピルバーグは見逃さないだろう」という声もある。賞レースで先頭集団にいるのは間違いない。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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