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中国映画の出品貫く 問われる文化交流のモラル 東京国際映画祭リポート(2)

2012/10/26

映画祭はいきなり揺れた。開幕を2日後に控えた18日夕、映画祭事務局に1通のメールが届いた。コンペティション部門に選ばれたワン・ジン監督の中国映画「風水」の不参加を伝える内容だった。

映画祭会場には「風水」(原題は「万箭穿心」)のポスターもはられている(22日、六本木ヒルズ)

すでにラインアップを発表し、チケットも販売、上映用の素材も到着し、字幕も付け終わっていた。そんな土壇場でのキャンセルは異例のこと。都島信成事務局長によると、最初のメールには差出人の名前もなかった。

同日夜、中国国営の新華社通信が「風水」の製作チームが参加取りやめを表明したと報じた。報道によると、製作チームは「日本政府と右翼は争いの解決に向け誠実な態度を示さず、中国国民の感情をひどく傷つけた」との声明をだした。尖閣諸島問題への日本政府の対応への抗議であることは明らかだった。日本の一部メディアもこれを引用する形で「出品中止」と報じた。

映画祭事務局は19日夕「出品者側から正式な連絡を受けていない。上映の予定に変更はない」と発表した。その後、メールの送信者が同意書を結んだ製作会社の別の人物とわかったが、9月上旬に結んだ同意書に「主催者の同意なしには出品をキャンセルできない」との規定があることから、出品取り下げには同意せず、予定通り22日に上映することを決めた。

ワン・ジン監督「風水」の一場面

上映にあわせて来日する予定だった監督、主演女優、主演男優の来日は取りやめになった。来日した撮影監督も22日夕の記者会見と夜の上映後の質疑応答への出席を見送った。夜8時55分、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映は予定通りスタートした。上映前に映画祭事務局の矢田部吉彦プログラミングディレクターは「風水」の芸術顧問を務めた映画監督のシエ・フェイ(謝飛)氏のコメントを読み上げた。

「映画祭の事務局が、我々の映画『風水』を評価していただいたことに感謝の意を表します。そして、本日ご来場のすべての皆様に、御礼申し上げます。皆様にこの映画を楽しんでいただけることを心から祈っております」

同日夕の記者会見で都島事務局長は、これまでの経緯を説明し、「出品」の状態は続いており、「授賞の対象にもなる」との判断を示した。

記者会見では映画祭側の対応について「中国側の怒りを増幅させる懸念はないのか」という質問もでた。これに対し都島事務局長は「映画祭は文化交流の場。われわれが選んだよい映画がたまたま中国の映画だったということで、そういう映画を上映できないということになると、政治を介入させたことになる。『風水』のような素晴らしい映画を東京から発信していくことこそ、ぼくらがやるべきことだと判断した」と答えた。

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