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巨匠マリックが描く普遍的世界と「ジ・アーティスト」の楽しさ

カンヌ映画祭リポート2011(7)

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NIKKEI STYLE

待ちに待った巨匠の新作が16日、登場した。過去38年間で「天国の日々」「ニュー・ワールド」などわずか4本しか発表していない寡作の米国人監督、テレンス・マリックの「ツリー・オブ・ライフ」である。

毎朝8時半から開かれるグラン・テアトロ・リュミエールでのプレス向け上映は満員札止め。急きょ裏手のテアトロ・ソワサンティエムもあけたがこちらも一杯になった。

マリック自身が育った1950年代のテキサスの小さな街を舞台にした物語である。大人になったジャック(ショーン・ペン)が大都会の摩天楼で、その子供時代を回想する形で語られる。信心深く厳格な父(ブラッド・ピット)、優しく寛容な母(ジェシカ・チャステイン)、2人の弟。それは古き良きアメリカの典型的な家族像だ。

厳しすぎる父親を子どもたちは恐れ、反抗する。優しい母親は見くびられ、子どもたちはやりたい放題。そして痛ましい事件が起こる……。マリックはそんな家族の心理のあやを丹念に描き出す。典型的なアメリカの家族ではあるが、一人ひとりが抱く感情はきわめて普遍的なものだと思わせる。それはたとえば現代の東京にあっても感じ取れるものだろうし、古来どの国の親も子も、持ち合わせた感情に違いない、と。

そう思わせるのが、世界をまるごととらえるようなマリックの詩的な映像だ。緑の木々、木漏れ日、流れゆく川、落ちていく滝。さらには星空、宇宙、恐竜、胎児、火山の爆発、いん石の衝突……。太古の昔から脈々と続く生きとし生けるものの営みという大きな物語の一こまとして、50年代テキサスの小さな物語が語られるのである。

1943年生まれのマリックはハーバード大、オックスフォード大で学び、マサチューセッツ工科大学で哲学を教えた経歴をもつインテリ。78年のカンヌ映画祭で監督賞を受けた「天国の日々」のあとは20年間映画を離れ、フランスで教壇に立ったこともあるという。生き方そのものも超然とした巨匠は、公の場にほとんど現れたことがなく、今年のカンヌにもやはり姿はなかった。

さて、前半のコンペ部門で底抜けにおかしく、最も楽しかった映画といえば、ミシェル・ハザナヴィシウス監督「ジ・アーティスト」である。非コンペ作品として選ばれていたが、開幕直前にコンペに格上げされ、15日公式上映された。

舞台は1920年代後半、無声映画期のハリウッド。大スターのジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)とひょんなことで出会った若い娘ペッピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)は、ジョージの導きでエキストラから女優の道を歩み始める。ところがトーキー化の波のなか、撮影所はサイレント映画の製作を中止。ジョージは過去の人となるが、ペッピーは売れっ子となり、2人の立場は逆転する。

面白いのはそんな物語をほぼ全編、サイレント、モノクロで描くのである。冒頭はジョージ主演の「快傑ゾロ」みたいな盗賊映画の一場面。「話せ!」と拷問されている盗賊が「しゃべらない!」と反抗する。無声映画だからセリフは字幕だ。ところが映画が終わった後の現実の世界でも、ジョージの声は聞こえない。何も音がない。そう。この大スターは無声映画の世界に閉じこもって、出てこないのである。

ほんのわずかだけ音が入る場面があるのだが、これが実に効果的に使われている。たとえば電話のベルやコーラスガールの笑い声で、ジョージの恐怖を表現する。冒頭の例のように字幕の使い方も機知に富んでいる。そんなしゃれっ気に加えて、ペッピー役の女優が若いころの淡島千景みたいにおきゃんな感じで、とても雰囲気にあっている。

ハザナヴィシウス監督はフランス版007といわれるスパイコメディーなど娯楽映画を撮ってきた人で、カンヌには初出品。実は2006年の東京国際映画祭で東京サクラグランプリを獲得している。受賞作は「OSS117 カイロ、スパイの巣窟」。この年の東京映画祭はコンペ作品のレベルがあまりに低いと審査員の不満が爆発したのだが、いやはや、先見の明があったのかもしれない。

(編集委員 古賀重樹)

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