軽い気持ちで見た彼の携帯に、別の女性との写真が
キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論
こんにちは。ライターの大宮です。がんばって働いているアラフォー独身女性の恋愛事情をインタビューする本連載。1人につき4話に分けてお届けしています。今回で第9話。3人目の女性が初登場します。
今年で40歳になる僕は、この連載に登場する女性たちと同世代です。仕事や恋愛を話題にした会食は趣味でもあるので、取材と原稿書きを楽しくさせてもらっています。好きこそものの上手なれ。我ながら面白い連載になっていると思うのですが、いかがでしょうか?
経営学者のドラッカーがどこかで書いていましたが、中年になったら弱みは克服できませんよね。ロジカルシンキングとか外国語とか各種の専門知識を僕が身に付けるのは遅すぎるでしょう。身に付けたいとも、もはや思いません。その代わり、好きで得意なこと(=強み)を伸ばすべきですよね。
僕の場合は、いろんな人と会ってもらっておしゃべりして、聞いて面白かったお話に自分の感想を少し添えて文章にすることが好きだし得意です。この強みを最大限に生かして、ささやかな社会貢献をしながら、やがて死ぬまでの生計を維持したいと思っています。
さて、本題です。大手メーカーで正社員として働いている片桐圭子さん(仮名、43歳)のお話を、東京・西荻窪のアジア料理店「ぷあん」で聞いています。オフホワイトの上質なアンサンブルニットがよく似合う色白美人の圭子さん。短期大学に在学中はキャビンアテンダント(あの頃は「スチュワーデス」と言っていましたね)を志していたそうです。
経済的な自立のため、歩合制営業もがんばって
当時の短大生は就職状況がとても良くて、大手銀行をはじめとする大企業からの内定もたくさんもらえたそうです。しかし、圭子さんはキャビンアテンダントになる夢を最後まで追い続けたために、すべての内定を断ることになってしまいました。
「短大を卒業するとき、生命保険会社の外交員になるしか選択肢はありませんでした。新卒者ばかりを集めたチームでしたが、正社員ではありません。完全歩合制です。成績が良くないので月給3万円という人もいました。毎朝、成績が発表されて、ノルマを達成できていない人は全員の前で上司から大声で責め立てられます。たいていの女の子は泣いてしまいますよ。私は負けず嫌いなので泣かずに口答えをしていました。保険に入る・入らないはお客様が決めることです、と。がんばって社長賞をもらったこともあります」
しかし、友人が結婚したり子どもを産んだりするたびに「保険を売るチャンスだ」と思ってしまう生活はしんどかった、と圭子さんは振り返ります。給与体系が変わり、長期的な視野での営業活動が報われにくくなったのもあり、3年後に退職しました。同期の8割は1年目で辞めてしまう職場だったのです。圭子さんはがんばったほうですよね。
都内の裕福な実家で不自由なく育った圭子さんですが、自立心が強いために短大卒業後は一人暮らしをすることにこだわっていました。とはいえ、経済的に苦しいときは頼りになる実家があるのは心強いことです。保険の外交員を辞めた後は、一時的に実家に戻らせてもらっていました。
「つなぎの仕事は続けましたよ。近所の補習塾で講師をしたり、和菓子屋で大福を売ったりしていました。いまのメーカーの中途採用募集があるのを教えてくれたのは両親です。英語ができなくてもいいので英語に興味がある人を募集、というゆるいものでした(笑)」
すでに25歳になっていた圭子さん。パソコンを触ったこともないのに事務職として採用されたのです。同僚がパソコンも業務も親切に教えてくれて、お昼休みにはのんびりとランチを食べられる、仕事で失敗してもしなくても同じ給料をちゃんともらえる……。保険の外交員とはまったく違う労働環境に圭子さんは驚き、かつてないほどの安心感を覚えたのでした。
「社内恋愛をして寿退社を狙うような女性もたくさんいました。私が入社したときも、上司から『海外営業で目ぼしいやつはみんな売れちゃったよ。残念だね』と言われたのを覚えています。でも、私はそんな目的で入社したのではありません」
この大手メーカーに入社してからは実家を出て一人暮らしを再開した圭子さん。自分の生活は自分で成り立たせるという気概を持って仕事に臨んできました。
彼の携帯に、別の女性とのきわどい写真が……
当時、お付き合いしている恋人が社外にいたのも社内恋愛には目が向かなかった理由の一つです。情が厚いので付き合うと長い、と自認している圭子さん。合コンで出会った7歳年上の健太郎さん(仮名)と7年間お付き合いしていたのです。健太郎さんは大手の経営コンサルティング会社の社員でした。
「すごく熱心に口説いてくれたから『かわいいやつめ』という気持ちで付き合い始めました。あの頃の私は、自分を引っ張ってくれる男性が好きだったんです。結果として、彼にはどこにも引っ張ってもらえなかったんですけど(笑)」
別れた原因は健太郎さんの浮気です。彼が携帯の機種変更をした際、自分が送った絵文字がどのように表示されるのかを知りたくなった圭子さんは、彼の携帯を無邪気にのぞいてしまいます。そして、健太郎さんが職場の20代女子と頻繁に会っていて、彼女とのきわどい写真まで保存していることを知りました。
「ショックでごはんを食べられませんでした。でも、1年近く我慢しましたよ。彼の携帯をつい見たくなっちゃう自分が嫌でたまりませんでした。年が明けたときに『もういいかな』と思ったんです。彼からの連絡は一切無視しました。私にフラれた理由は、本人には一生わからないかもしれませんね」
そのとき圭子さんは31歳になっていました。多くの未婚女性が焦りを覚える年齢ですよね。圭子さんも例外ではありませんでした。そして、婚活を始めたのです。その話はまた来週。
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フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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