別れを乗り越え、管理職に 恋愛は日々遠く…
キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論
こんにちは。ライターの大宮です。5年来の友人と恋愛関係になったのに、わずか4カ月で別れることになってしまった女性の話を聞いています。化粧品メーカーで管理職を務めている関根直子さん(仮名、40歳)です(前回記事はこちら)。
別れの原因は、恋人の男性が直子さんの学歴や職歴にコンプレックスを感じてしまったこと。現在の20代には考えられないかもしれませんが、僕たちの世代の男性は「女性より優位に立ちたい。尊敬されて尽くされたい」という願望を内に秘めていることが多いのです。仕事人間の父親と専業主婦の母親に育てられ、大学でも女性は少数派だったことが影響しているのかもしれません。
現代は共働きが当たり前ですよね。「妻子を余裕で養える」収入を安定的に得ている男性などは一握りです。願望と現実に引き裂かれた男性は、無意識のうちに卑屈になったり消極的になったりします。その姿を見て、せつない思いをしている女性も少なくないと思います。
「女の厄年」で迎えた父親の死や自らの体調不良、さらには恋人との別れ。一つひとつを何とか乗り越えた34歳の直子さんを待っていたのは管理職への道でした。
自分のチームを成長させたい 仕事への姿勢も一変
「管理職試験はかなりの難関で、同期の人たちはほとんど落ちていました。私はなぜか合格し、30代半ばの女性マネジャーとして社内で話題になっています。正直いって、女性だからゲタを履かせてもらったのかなと思うこともあります。若くして管理職になった男性は幹部候補生のすごい人たちばかりですから」
年上男性も含めて8人のメンバーを率いる管理職となった直子さん。部下の一人は3歳年下の独身男性で、昇格した直子さんを「サシ飲み」で祝ってくれたそうです。
「末っ子気質の私は年下が好きじゃないんです(笑)。年上に甘えるのは得意だけど、年下にはどう接したらいいのかわからなくて無駄に威張ってしまうこともあります。でも、彼と仕事のことを初めて熱く語り合えたのはよかったですね。恋愛感情? それはありません。上司としての愛情はたっぷりありますけど……」
僕は職場恋愛を個人的に推奨しています。同じ会社や学校の出身者は生い立ちや仕事観・生活観が似ていることが多く、結婚をしても家庭生活に行き違いが生じにくいと感じるからです。普通に生活していると、身近にいる異性が当たり前の存在のように感じます。でも、社会全体からすると価値観が似ている人は意外と少ないものです。
直子さんには社内の年下男性にも目を向けてほしいと思いますが、管理職という立場上は難しいのかもしれませんね。部下を任されているという責任感を人一倍感じ、仕事への姿勢も大きく変わったと直子さんは自覚しています。
「以前の私はいわゆる『ベルイチ』の女でした。自分の仕事はきっちりやるけれど、終業ベルが鳴ったら一番にダッシュで帰るのです。残業は基本的にしないし、会社の飲み会もほとんど断っていました。アフター5も休暇もすごく充実していましたよ。でも、マネジャーになってからは、メンバーと自分の成長を考えるようになりました。そのためにはチームの地位も向上させたい。(管理職になって)残業代が出なくなった今のほうが以前よりも残業しています」
若手管理職としてがんばっている直子さんですが、「仕事を口実にして見るべき現実から目をそらしている」と自己嫌悪に陥ることもあります。その現実とは、気になる男性すらいないこと。老後は孤独に過ごすことになるかもしれない、と直子さんは不安を抱えています。
心を満たしてくれるのは男性よりも女友達
賢くて気遣い上手な直子さんが老後に孤独になるとは僕は思いません。なぜなら、恋人はいなくても固い絆で結ばれている女友達がいるからです。
「人数は少ないですよ。学生時代からのつながりの4人ぐらいです。全員が地方出身者という共通点があります。もはや家族みたいな関係ですね。自分の身に何かあったときのために、財布には彼女たちの名前と連絡先を書いた紙を常に入れています。話していて面白くて、ディテールも含めて満たしてくれるのは男性よりも女性ですよね。男性には何を求めているのかといえば、『これをすると人生はもっと楽しいよ』と私に教えてくれること。男性の好みは昔から変わっていません」
未婚既婚を問わず、アラフォーの女性たちから同じような話を聞く機会が少なくありません。恋愛対象は男性であり、彼らには刺激を求めている。でも、最も気を許せて助け合えるのは古くからの女友達だ、というのです。
我が身を振り返ってみると、男性の場合はこのような友情は成立しにくい気がします。例えば大病をして寝込んだとして彼らに助けてもらう気にはなれません。妻もしくは母親を失ったら、僕たち男性こそ孤独感の高い生活になりそうです。せめて奥さんを大事にしなくちゃ……。
ええっと、直子さんの話でしたね。四十路を目前にした39歳の年に、直子さんは個人経営の結婚相談所に登録します。そこである現実に直面するのです。詳細は来週にお届けします。
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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