誰でも簡単「時短おせち」 市販品にひと手間
土鍋やグリルが活躍
12月7日、東京ガスキッチンランド江東(東京都江東区)では「アイデアおせち」の料理教室が開かれていた。参加者の関根佳代さん(31)が毎年作るのは、栗きんとんやなます、松前漬け。「ほかは市販品に頼るけれど、お正月らしい雰囲気は大事にしたい」
紀文食品の「お正月首都圏調査2012」によれば、8割以上の人が正月におせち料理を用意する。平均9.3品を用意し、市販品の比率は78%だった。品目別ではカマボコ、黒豆、雑煮、だて巻き、栗きんとん、数の子、昆布巻き、なます、煮しめの順に多い。
「市販品にひと手間かけて我が家流に」と勧めるのは、東京ガス「食」情報センター主幹の杉山智美さん。お薦めは「黒豆ご飯」だ。
黒豆は邪よけの「黒」と「マメに」働くといった縁起をかつぐ正月らしい一品。だが作るのに手間がかかる。そこで市販品を、5対1の割合の米と黒米に加えて炊く。「土鍋を使い、中火で10分かけ沸騰させた後、弱火で20分炊くといい」。型抜きを使って華やかさを出すのも手だ。
蓄熱性の高い土鍋なら、火を消しても味を染み込ませるのに十分な高温を長く保つ。「ゆっくり加熱するので野菜の煮崩れを防ぎ、煮しめを作るにも格好の道具」だ。
なます作りにグリルを使うという、意外な組み合わせも杉山さんは教えてくれた。「短時間で味を染み込ませるには一度加熱すると効果的。千切りした大根、ニンジンなどの野菜をグリルで蒸し焼きにしてから、ごま酢に漬け込むといい」
野菜を蒸し焼きにしながら、空いた網の上でエビを塩焼きするなど、グリルで同時加熱すれば「時短おせち」が可能だ。
ローストビーフも簡単に作れる。室温に戻した厚さ3センチほどの牛もも肉に塩とコショウを手ですり込み、数カ所に入れた切り込みに薄く切ったニンニクを差し込み、グリルの強火で約7~10分焼くだけだ。焼き上がったらアルミホイルに包み、一晩落ち着かせれば万全。並の塊肉がプロの味に早変わりする。
おせちは重箱に詰めるものと堅苦しく考える必要はない。国学院大学教授(民俗学)の新谷尚紀さんによれば、そもそもは「御節」といい、正月や五節句などの節日に神様に供える食膳だった。
それが「江戸時代後期になると『正月節料理』と『年始重詰め』という言葉が登場してくる」。重箱には数の子、田作り、たたきゴボウ、煮豆などを入れた。源流は来客がつまむための年賀の飾りで「喰積(くいつみ)」と呼ばれた物だ。
その重詰めをおせち料理と呼ぶようになったのは大正以降。「『婦人之友』などの婦人雑誌がカラーイラストで紹介し始めた。大都市圏の主婦層に向けた情報発信が、各地の正月料理に変化をもたらしていった」と新谷さんは解説する。
重箱に詰めなくてもおせち料理。そう気楽に考えて、「我が家流」のおせちで正月を演出してみよう。
(福沢淳子)
[日経プラスワン2013年12月14日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。