米大統領選の行方は? コロナ対応や人種問題が左右
バイデン前副大統領は強い黒人支持者を持つ
11月3日の米大統領選が徐々に近づいてきたわ。共和党のドナルド・トランプ大統領(73)と民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)の決戦ね。新型コロナウイルスへの対応が、決め手になるのかな。投開票日まで5カ月を切った選挙の行方について、木坂京子さんと小松奏子さんが小竹洋之編集委員に聞いた。
――コロナ危機は選挙戦にどう影響しますか。
大統領選の争点は多岐にわたりますが、「親トランプ」か「反トランプ」かが最大の対立軸になるでしょう。内向きの政策や独善的な政治を貫くトランプ氏を容認するか、否定するかの選択です。
新型コロナのまん延と深刻な不況が襲い、かつてない危機に対処できる指導者は誰かという視点も加わりました。ウイルスという見えない敵との戦いに心を砕く「消毒ママ(サニタイザー・マム)」らの投票行動が、勝敗を左右するとの見方も出ています。
――支持率ではバイデン氏がリードしています。
米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスで6月1日時点の平均支持率をみると、バイデン氏が49%でトランプ氏の42%を上回ります。フロリダやペンシルベニア、ウィスコンシンなどの激戦州も、バイデン氏優勢です。ただ勝敗はまだ読めません。
民主党中道派のバイデン氏は上院議員や副大統領を歴任し、現実的な政策と親しみやすい性格で知られます。トランプ氏の再選を阻み、民主主義や国際協調を主導する米国に戻りたい人々の期待を集めているのは確かです。
ただ民主党の大統領候補を争った左派のバーニー・サンダース上院議員ほど訴求力がなく、セクハラ疑惑や失言癖で物議を醸す場面も目立ちます。コロナ危機でオンラインの会見や集会を迫られており、露出度でトランプ氏に劣るという弱みもあります。
――トランプ氏には現職の強みがありますね。
トランプ氏の発信力は侮れません。いまは「戦時の大統領」と称し、コロナ危機への対応を広くアピールするのに躍起です。支持基盤の白人や中間層に訴える政策にも余念がなく、対中圧力の強化や移民受け入れの一部停止などに動いています。共和党内の支持率は80~90%で推移しており、再選の可能性を過小評価することはできません。
一方、1991年の湾岸戦争後や2001年の同時テロ後に比べて大統領の支持率が上がらず、バイデン氏との差を縮められないのも事実です。危機管理の甘さや科学的知見の軽視で批判を浴び、新型コロナの感染者に消毒液の注射を提案するといった失態を演じたのが響いています。
売り物だった戦後最長の景気拡大が途切れたのも、大きな痛手でしょう。国内総生産(GDP)の減少や失業率の上昇は、08年のリーマン・ショック後より深刻です。景気の低迷が長引けば、再選の強い逆風になりかねません。白人警官の暴行による黒人死亡事件に端を発した全米抗議デモの影響も気になります。