意見が対立した社長を説得

試作機の開発は順調でしたが、ネーミングで中村社長と対立します。中村社長は自ら開発のチェックを行い、疑問点があれば事細かに指示します。店の内装や機械のレイアウト、イベントの展示方法に至るまで、です。子供を世に送り出すようなものですから、納得するものにしたいのでしょう。お客さんに会うよりも、製品に使う時間を大切にしていました。

中村社長はもぐら退治に対抗して「ワニ退治にしろ」と言います。しかし、私は恐怖心に訴えたく、パニックという言葉にこだわります。今思えば幼年期にバスにひき殺されかけた、あの迫りくる恐怖が名前の由来かもしれません。

中村社長に5回は直談判しました。最後は根負けでしょうね。「面倒くさいからパニックでいいよ」と言われました。

試作機を出すと、子供たちがワァーッと群がります。どんどん百円玉が入れられていくのがうれしくて泣いてしまいました。

1万台を超える大ヒットに

発売は1989年。業務用ゲーム機は一般的に500台売れればヒットですが、ワニワニパニックは1万台も売れました。30年近くたった今も現役です。売れ過ぎて「モグラ退治」の会社から苦情が来ました。

ちなみにサングラスをしているワニは、映画「ターミネーター」に登場する俳優さんをイメージしました。こんなところにもつまらない遊び心を盛り込んでいるのです。

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石川祝男
いしかわ・しゅくお 1978年関西大文卒、ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)入社。2006年バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)社長に就任。09年バンダイナムコホールディングス社長、15年会長、18年6月顧問、19年6月退任。山口県出身。

[日経産業新聞 2018年10月16日付]

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