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日経実力病院調査

足の痛み やさしく治療 腰部脊柱管狭窄症 実力病院調査

2017/11/27

腰部脊柱管狭窄症では、内視鏡を使った傷口の小さい手術も普及する(岩井整形外科内科病院提供)

足の痛みやしびれの原因となる腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症は高齢者に多く、高齢化に伴い患者数が増えている。重症になると歩行や排尿に影響があり、患者の生活の質(QOL)に直結する。日本経済新聞社が実施した実力病院調査では手術で原因を取り除いたり、新しいタイプの薬で痛みを緩和したりして、患者の負担軽減を目指す病院が上位に並んだ。

■受診当日に検査

今回の調査で2015年4月~16年3月の「手術あり」症例が518件と全国最多だった岩井整形外科内科病院(東京・江戸川)は、1990年の開設以来、腰や首、関節などの整形外科治療を中心に手掛け、特に内視鏡を使った身体的負担が少ない手術に定評がある。稲波弘彦理事長(64)は「がんなどの疾患と違い、画像診断だけでは原因を特定できないことが多い。正確な診断がないと不必要、不十分な手術につながりかねない」と強調する。

脊柱管は背骨、椎間板、関節、靱帯に囲まれた脊髄の神経が通るトンネルに当たる。椎間板や靱帯が加齢などの影響で分厚くなり、腰の脊柱管が狭められることで神経を圧迫。実際の患部は腰周辺だが、脊柱管を通る「座骨神経」が支配する太ももや膝などにしびれや痛みが出て、歩行が難しくなる。手術では骨や靱帯の一部を切除したり、上下の骨を固定したりし、神経の圧迫を和らげる。

レントゲンや磁気共鳴画像装置(MRI)で脊柱管の狭窄が見つかっただけでは痛みの原因とは断定できない。稲波理事長は「患部に痛み止めを注射し、症状が改善するか確認することが正確な診断には不可欠だ」と指摘。この診断には手間がかかるが、同院では主治医が原則、受診したその日に検査するという。

在籍する7人の整形外科医が手術を担当。内視鏡を使う手術は1時間~1時間半かかるとされるが同院では30分前後。「医師1人当たりの手術件数が多く、技術の向上につながっている」(稲波理事長)という。

一方、症状が比較的軽い場合は手術をしない選択肢もある。調査で「手術なし」症例が446件と最多だった関西医大総合医療センター(大阪府守口市)整形外科の石原昌幸助教(38)は「患者の負担を考えれば、手術なしで治すのがベスト」とのスタンスだ。

腰部脊柱管狭窄症を巡っては、一般的な消炎鎮痛剤とは作用の仕方が異なる新しいタイプの鎮痛薬が次々と登場。神経伝達物質を阻害する薬や、痛みの信号を脳に伝わりにくくする薬のほか、一部の抗うつ薬も効果があり、症状を軽減できるようになってきた。

石原助教は「かかりつけ医による投薬治療では痛みがコントロールできず、『手術が必要』と紹介された患者でも、新しいタイプの薬なら症状を抑えられることも多い」という。

■出血量も激減

同センターは「手術あり」も268件と全国トップクラス。患者の身体的な負担を少なくするため切開部分を最小限にする「最小侵襲脊椎安定術」(MISt)と呼ばれる手術を積極的に導入している。

その一種の「脊椎側方進入椎体間固定術」(XLIF)では、背中を数十センチ切開する必要があった手術を数センチの穴を数カ所あけるだけで可能だ。海外でのセミナー受講などを経て手術のライセンスを取得した医師が対応している。

手術中の出血量は多いときは3千~5千ミリリットルに達したが、この方法なら500~600ミリリットルに減る。石原助教は「高齢者に多い疾患のため身体的な負担軽減が重要だ」と強調する。

■高齢者の1割に狭窄 症状はうち1~2割

和歌山県立医大などの調査によると、磁気共鳴画像装置(MRI)検査で脊柱管の狭窄(きょうさく)が見つかる高齢者は約10%で、国内の推定有病者は約580万人に上る。ただ実際に症状があるのは、このうち1~2割にとどまった。

最も特徴的な症状は、足の痛みやしびれで歩行が困難になっても、少し休むと歩けるようになる「間欠跛行(はこう)」だ。休息時に前かがみの姿勢になることで神経の圧迫が和らぎ、血行が回復して症状が緩和するため歩ける。一方、椎間板ヘルニアでは前かがみの姿勢では症状が悪化することが多い。

治療は投薬や手術のほか鎮痛薬を注射するブロック療法や運動療法を併用することもある。

調査の概要 調査は、症例数(診療実績)、医療の質や患者サービス(運営体制)、医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、日経リサーチに依頼してインターネット上の公開データから抽出して実施した。
診療実績 厚生労働省が2017年2月に公開した15年4月~16年3月の退院患者数を症例数とした。対象は病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1667病院のほか、導入準備中などを含め計3191病院。症例数の後の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の後に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。16年10~12月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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