アメリカのミルクセーキ、アイスにホイップクリーム?
ミルクセーキとプリンアラモード(3)
NHKラジオ「ふれあいラジオパーティー」に出演した。放送の中で「甘納豆入りの赤飯は札幌の光塩女子短大の創始者、南部明子先生考案にかかる」という説明をしたところ、北海道のリスナーから「戦前からあった」との電話を番組途中にいただいた。電話をくださった方の連絡先が残っていないので、直接お話することはできなかったが、戦前からあったという方がおられるのならば、恐らくそういうことであろう。そして南部先生は従来のものに改良を加えたか簡素化したかして普及に務められたのであろう。
前回、本題に関するメールが少ないと書いたところ、来ました。どっさり来ました。本当にありがたいことであるが、今度は来すぎて紹介しきれないのである。
これに関連したメールをいただいている。「これはもしかして新日本奇行始まって以来のピンチでしょうか」ということで、猛然とミルクセーキ探索の旅に出てくださったミシガン在住の「みそガンの松本さん」は、このような物件と遭遇した。
ミルクセーキそのものは米国生まれなのかもしれない。だが、松本さんが飲んだものはゆるいアイスクリームで氷が入っていない。のっているのはLc-Kさんが映画の中でご覧になったのと同様、ホイップクリームである。つまり日本の大正時代にハイカラ連中に好まれたミルクセーキは、米国のものをヒントに日本で独自に変化発展したもののようである。卵、砂糖、バニラエッセンスを氷とともに撹拌することによって、アイスクリーム似のものを作り出そうとしたのではないかと思う。確かにミルクセーキ自体を日本発祥とすると疑問符が付くようだ。だが、『たべもの起源事典』が収録していたレシピのものは日本生まれと言ってもいいのではないか。
家庭で作る日本のミルクセーキに関して、似たメールが2通。
私、そのプラスチック製シェーカー付きインスタントミルクセーキを知りません。とっくになくなってしまったようです。自分でシャカシャカやって作るなんて、楽しかったでしょうね。私は「ワタナベのジュースの素」を水で溶いてゴクゴクやるのが大好きでした。
デスクしずしず乱入 「電化製品世代」の私としましては、親が勢いでミキサーを買ったほんの数カ月だけミルクセーキをたしなんでおりました。ミキサーに牛乳と卵の黄身、砂糖、氷とバニラエッセンスを少々。それでふたを閉めて、カチッ、ウイーン。自分でシェイクなんておぼっちゃまとしては腕が太くなってしまいますわん、おほほ。
ウチにテレビがはいったのは東京オリンピックのとき。ミキサーなんて…。
コーヒーを頼むと自動的にホイップクリームが付いてくる地域はどこか。この問題がひっかかったままである。
あっ、そうたいそうたい「シャポー」たい。県庁跡にできた「アクロス」のシャポーでこのホイップクリーム付きコーヒーに遭遇したとば思い出したたい。ああー、そげんやったねえ。ちゅうことはコーヒーにホイップクリームは福岡県周辺の現象ちゅうことやろか。それとも九州はどこでん、こげなこつばしよるとやろか。
名古屋に本社がある「めいらく」グループ、スジャータの「コーヒーフレッシュ」!!関西はどうでしょう。
ミルクセーキは「飲む」ものか「食べる」ものか。どうでも良すぎて、すごく気にかかるテーマである。
私が久留米で食べたミルクセーキは砕いた氷ジャリジャリのフラッペ状態で、飲めったてそうは簡単にいかない物件でした。だから食べるしかありませんでした。
ところでアイシーって何?
危機感を抱いていただき、ありがとうございます。そしてやっぱり「食べる」ですよね。教科書のレシピに氷が入っていなかった点に関心があります。教科書は東京で作っています。東京のミルクセーキは飲むものだそうです。ということは東京と九州では違うミルクセーキが存在している可能性があります。ひょっとして発見?
喫茶店関連が続いた。ここでちょっと脇道にそれる。きりたんぽを巡るハゲシイ論争。
お暇があれば、市役所の観光課を訪ねて「きりたんぽ発祥の地はどこですか?」と聞いてみましょう。物凄くヒステリックに鹿角市がきりたんぽ発祥の地であることを書いたパンフを渡され、頼みもしないのに延々と「鹿角ときりたんぽの話」を聞かされるハメになります(銀河さん)
鹿角まで行く時間がないので鹿角市役所のHPを見てみました。「発祥の地鹿角きりたんぽ協議会」を開くと、なるほどなるほど銀河さんご指摘のような、納豆の糸のように粘っこい「鹿角発祥説」がこれでもかっていうくらい展開されています。読み応えがありますね。
銀河さんは単身上京して寮暮らし。そこでこんな会話が交わされているらしい。
うーん、困った。本題から遠く離れるが、オレンジジュースで炊くご飯の話が出てきたら放っておけなくなってしまった。
デスク身を乗り出し 怖いもの見たさでしょうか? 関東人には想像を絶するご飯です。ちなみに、青森や長野で「ジューシーライス」というとアップルジュースで炊くのでしょうか? 山梨ではグレープジュースでしょうか? 梨農家している千葉の親戚で「ジューシーライス」をごちそうになった記憶は……ございません。
喫茶店に戻る。先週、コメダ珈琲店の「シロノワール」情報を寄せてくださった食欲と行動の人、ミルフォードさんが現場に急行した。
お店の人に、どうして「シロノワール」というのか質問したところ「ソフトクリームの白とデニッシュパンの焼き目の黒・冷たいものと温かいものという対照的な組み合わせをイメージさせる『白と黒』のふたつの意味がある」そうです。シロは日本語の「白」、ノワールはフランス語の「黒」→あわせて「シロノワール」ということらしいです。
一緒に「コロッケ」と「コーヒーシェイク」(通称シーシェ)、「ミックスジュース」を頼んでみました。「コロッケ」は山盛りのキャベツに感動。「コーヒーシェイク」は蜂蜜かジャムを思わせる瓶のような容器に入って出てきました。中身のシェイクは別府の泥湯をかき混ぜたときのような感触でした。でも、おいしかったです。
「ミックスジュース」も宇宙船のような瓶状の容器に入っていました。
愛知県出身の同僚は「シロくれや」とともに「シロちょー」という注文の仕方もあると言っている。瀬戸の方では「シロちょーす」になるんだとか。
神奈川に進出したコメダ珈琲店で「シロちょー」とやってみたい気がする。なにしろ私には名古屋の居酒屋で「熱燗ちょー」と言ったら通じたという輝かしい成功体験がある。
シロノワールという名前の由来については、日本語とフランス語を結合させたところに若干の無理無理感が残るが、そうなのだから仕方がないのである。
「瓶のような容器」は蓋をしてシーシェをよーくシェイクするのだそうである。
今週紹介しきれなかったメールがたくさんあるが、次回以降ぴょこっと登場するかもしれないので、大いに注意していただきたいものである。
「転勤族の妻」さんからお尋ねがあった「わらびもちの屋台」に関して、福島からメールが来着した。
近所によくほえる犬がいるんです。その犬はわらびもち屋が特に気になるらしく懸命にほえます。すると屋台も負けじと音量を大きくしてノロノロ走るような。「頑張れワンちゃん、もっとほえろ」と応援しています。
わらびもち屋台は西日本で珍しいものでなかったとは。知らなかった。なにしろ初めてわらびもち屋台を見たのです。あまり売れているように見えません。今度買ってみようかと思ったら、最近来ませんね。郡山から撤退したのでしょうか。来なくなるとちょっとさみしいかな(福島のテレジアさん)
わらびもちの屋台は東日本にないわけでもない。しかし、人気がいまひとつと言うか、犬にほえられまくっている。そしてとうとう来なくなってしまった。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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