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食べ物 新日本奇行 classic

スパゲティにうどんそば…名古屋人は「あん」が好き? 日本の甘味処(3)

2016/5/28

今回もたくさんのメールをいただいた。たくさん過ぎて困っているほどである。紹介しきれん。

まず最初は、甘納豆入り赤飯誕生の経緯。考案者の南部明子さん(故人)の娘さんで光塩学園理事長の南部ユンクィアンしず子さんにお話を伺った。

赤飯・北海道バージョン
母は昭和20年代後半から30年代前半にかけて、地元の北海道新聞、北海タイムズなどが主催する料理の講習会にでかけるたびに、簡単にお赤飯が作れる方法を紹介したのだそうです。ヒントは戦前のことですが、祖母が普通の小豆の赤飯を炊いたとき、食べやすいように甘納豆をのせた。すると子どもたちがとっても喜んで食べてくれたんだそうです。母はそのことを覚えていて、簡単に作れる赤飯を考えつきました。もち米と普通のうるち米を半々の分量で炊くのですが、そのとき食紅を混ぜピンクに炊きあげます。ご飯が炊けたら甘納豆を入れ、一緒に蒸します。それだけです。前の晩から小豆を水に漬けてといった面倒がありませんし、炊飯器ひとつでできます。母がこの方法を講習会で紹介すると、翌日には近所のお菓子屋さんから甘納豆が消えるくらい評判になったそうです。
母は働く女性の草分けのような人でしたから、戦後の女性の社会進出が頭にあったのかもしれませんね。うちの学園では代々この方法を学生に教えています。母は生前、地元の新聞やラジオ、テレビなんかの取材をたくさん受けていますから、北海道ではよく知られていますよ。去年の12月にもテレビ朝日の方が取材に見えました。あれは全国放送だったんではないでしょうか。

ということだった。テレ朝の番組は見ていない。見ていれば逆に興味を抱かなかったかもしれない。そしたら「甘味処」調査は思いついていないかもしれない。何がどうころぶかわからないものである。

だし巻き? 卵焼き?
ご意見 だし巻きと卵焼きは別物だと思っています。だし巻きは卵を食べるものではなく、だしを食べるもの。卵はだしを食べるためのつなぎに過ぎません(もと京都人さん)
ご意見 今回初めてVOTEしようかと思ったんですが4問目でひっかかりました。「あれ、卵焼きとだし巻きは違うもんやで」 私的にはそうなのです。おべんとに入っているのは卵焼き、お酒のアテ(肴)はだし巻きと決まっています。いや、決めてます。第4問のように「卵焼き」と聞かれれば、愛するだし巻きが不利になるのでは?(兵庫県高砂市45歳男性さん)
卵をといて合わせだしでのばしたものを味付けして巻きながら焼く=PIXTA
ご意見 私はかつて京料理の世界にいたのですが、関西でいう「だし巻き」は卵をといて鰹と昆布の合わせだしでのばしたものに塩・薄口醤油で味付けして、吉野葛でつないだものを卵焼き鍋で巻きながら焼いたもの。関東でいう「卵焼き」は卵をといて魚介類のほぐし身を混ぜ合わせ濃い口醤油・砂糖で味付けして、卵焼き鍋で裏表一回ずつ焼いたもの。多少のアレンジはあるものの、この辺が業界のスタンダードであったように記憶しています(?さん)
だし巻きと卵焼きには心理的区別?

大阪に住んでいたとき、関西のみなさんのだし巻きに対する特別の思いを痛感しました。店のメニューにだし巻き定食が普通にあることにも驚きました。そして、関西にはだし巻きと卵焼きに対する心理的区別があることも承知しています。

実は三林京子さんの「ああ書けば、こう食う」でもそのことが触れられているのです。

でも技術的なことは別にしてここで言う「卵焼きは」は一応「卵をあんな風に焼いた料理」と理解してください。VOTEの項目でだし巻きと卵焼きを分けると甘味調査ではなく「だし巻き地帯・卵焼き地帯の分布」調査になってしまうのです。どうぞあんさん、今日のところは目ーつむっておくれやっしゃなのです。

赤飯にゴマ砂糖
ご意見 徳島県鳴門地方の赤飯は塩ゴマではなく「ゴマ砂糖」をかけて食べるんだとか(高知県の恒石さん)

鳴門と五島列島がともに赤飯ゴマ砂糖地帯だったとは、びっくりです。共通点は……海。海でつながってるからなあ、って言ったってそれがどうしたんだでしょう。いったいどうなってるんでしょうね。

山梨には両方ある? 小豆の赤飯と甘納豆赤飯が共存しているっていう意味ですか? それとも砂糖なしと砂糖ありの赤飯があるってことですか? いずれにせよ、どんな地図ができるのか想像もつきません。やっぱりこの調査はやってよかった。

油揚げが入った白味噌の味噌汁=PIXTA
ご意見 実家の三重ではお葬式に来ていただいたお客様には昼食をおだししますが、そのなかになくてはならないものとして、お砂糖たっぷりの白味噌のお味噌汁がございます。これはもう甘いのを通り越しており、お汁粉やぜんざいなんかより何倍も甘いですよ。ちなみに中に具は油揚げです。これは決して珍しくないと近所の人は教えてくれました(今度こそ本当に匿名さん)

苦労して育ったんですね。お汁粉より何倍も甘い味噌汁を飲んでいたんですか。でもそこまで甘いと味噌汁って言っていいんですかね。近所の人は決して珍しくないと断言したらしいですが、その断言にはハンターイ。これからは「三重の液状味噌餡」と呼びましょう。

砂糖、かける?
ご意見 私の母は七草粥に砂糖を振りかけて食べます。「お粥に砂糖なんて変」と言ったら「おはぎだって甘い」と言い返されました。ちなみに我が家の七草粥は大根、ニンジン、里芋、昆布、餅などが入ります(東京出身・30歳 ごはんやおかずが甘いのは嫌!だけど甘味大好きな女子さん)

独自の七草粥、本当に苦労さまでございます。本物の七草粥に入るべきものがいっこしか入ってないところがとっても凄いですねえ。しかも砂糖のおまけまで付いて。でもこれは地域性というより個人の強烈な趣味ですね。それと、HNがもうちょっと短いと助かります。

きんぴらごぼう
ご意見 私の実家の新潟には「あいもんだんご」という食べ物があります。いわゆる大福のあんこのかわりに、あのお総菜の「きんぴらごぼう」が入っているのです。現在、東京在住ですが周囲に聞いても知らない人ばかりです。他地方には存在しないのでしょうか(斎藤さん)

他地方にもいくらでも存在するんじゃないですか。全国のモスバーガーに行くと……あっ、あれはきんぴらライスバーガーでした。でも、おいしそうですね。

野沢菜入りおやき

中華の蒸しパン感覚。軽井沢で食べた「お焼き」に野沢菜が入っていましたが、それともニュアンスが似ていますね。甘味ではないのですが、逆甘味の一品として紹介しました。逆甘味としては、沖縄チャンポンさんから福島県N町で発見した「しおあめ」情報が寄せられています。

甘いあめに塩が入ったもので「甘いのかしょっぱいのか、はっきりせい」という味だったそうです。でも「はっきりせい」と言われたあめは困ったでしょうね。

お雑煮? ぜんざい?
ご意見 鳥取県のお雑煮は「小豆」仕立てというのは、つとに有名なことと存じます。つまり「ぜんざい」(異論がある方もあるかもしれませんが)。一方、学校給食にメインディッシュで「ぜんざい」がよく出ていました。そのころの私は「お雑煮」という意味を知らなくて「ぜんざいと献立に書いてあるが雑煮の間違いじゃないか!!!」と憤慨していました(鳥取県出身38歳さん)
秋田県南部では納豆汁がお雑煮代わり

ぜんざいと区別がつかないということは、鳥取のお雑煮は甘いということでしょうか。もしそうなら、同じものじゃないですかねえ。正月になると、ぜんざいに青菜やなんかをちょっと足して雑煮。ふだんは餅だけ入れてぜんざい。普段の給食に出るものが正月の自宅の食卓に登場したら複雑な気分でしょうが。

お雑煮というのは本当にいろいろあります。農山漁村文化協会から出ている全国都道府県の食事聞き書きシリーズという大作があります。全国の年配の方に昔食べていたものや、年中行事のときに食べるものを丹念に聞いたものですが、正月料理は町、村、集落単位で変化するようです。

山形・河北町のそばは鶏だし 具も鶏肉

秋田県の主婦「雷」さんからは「こちらでは何でも鶏にだし。いわば、きりたんぽの味にしてしまうところがあります。うどんもそばも鶏。おすましも鶏。おでんもお雑煮も鶏です」というメールが来ました。雑煮が鶏だしというのも「およよ」ですが、鶏だしのうどん・そばには以前びっくりしたことがあります。

山形ラーメンの取材に行ったとき、どっかのおそば屋さんで食べたそばのつゆがチキンテイストで「麺を変えたらラーメンじゃん」と思いました。昆布だしたっぷりの大阪うどんと、鶏だしの秋田うどんが闘ったら金網デスマッチになるでしょうね。そこに、煮干しだしの讃岐うどんが乱入したりして。

この辺で名古屋問題に移ろう。毎回のように名古屋情報を送ってくださる愛知県知立市学生22歳さんのメールを短縮して紹介する。

◇ ◇ ◇

鉄板スパゲティ

(1)鉄板スパゲティ

昔から名古屋の喫茶店にあるメニュー。1人用のステーキ鉄板皿に薄焼き卵を敷き、ケチャップとデミグラスソースで味付けしたパスタが載ったもの。ジュージューの熱々。具はタマネギ、ベーコン、ピーマン。上に赤いウインナをトッピング。別名「名古屋風ナポリタン」。

あんかけスパ

(2)あんかけスパ

野菜ベースの独特のあんを太めのパスタにかけたもの。名古屋のヨコイが有名で、スーパーではヨコイのパスタの素が売られている。コンビニでは(1)(2)の両方とも手に入る。

(3)小倉とマーガリンのサンドパン

小倉&マーガリンをはさんだホットドッグみたいな長いパン。名古屋のパン売上第1位という説がある。

スガキヤのインスタント麺

(4)小倉スパゲティ

名古屋市昭和区にある「マウンテン」という喫茶店の看板?メニュー。抹茶味の太めパスタにホイップクリームと小倉を載せたもの。大学がそばにあるので罰ゲームとかで食べる。これが好きな人の話は聞いたことがない。

(5)スガキヤ

この会社が東海地方を中心に展開する和風とんこつラーメンと小倉系デザートを組み合わせたファストフード店は、女性のオアシス。

コメダといえばシロノワール

(6)モーニングサービス

夕方までモーニングサービスという店もある。「コメダ」というチェーン店が有名。朝から車の行列ができる。量・メニューは体験の価値あり。

◇ ◇ ◇

鉄板スパとあんかけスパは「偏食アカデミー」時代に取材しました。鉄板スパにのっている赤いウインナが「たこ」に切ってあったので笑ってしまいました。

たこさんウインナ

見ていただくとわかるように、ソースをパスタの上からかけるのではく、周囲にかけ回すのが独特の美学です。「あん」とは言っても和風ではなくちゃんとしたソースです。ただ、とろみをだすためにかたくり粉を入れるので「あん」のような風味を持っています。

名古屋の人は「あん」が好きなのでしょうか。栄のど真ん中であんかけうどん・そばの専門店を発見しました。

幻の手羽先

それともう一つの名物は「幻の手羽先」でしょう。「世界の山ちゃん」という店に何度か入りました。手羽先をピリ辛に揚げたやつを注文すると「骨の上手な外し方」を書いた紙切れがあって(割りばしの袋だったかな)、書いてある通りにすると実にきれいに骨が外せたので、幸せな気分になりました。

スガキヤのラーメンは確かに安い。でも、何度食べてもスープがぬるい。ぬるくなくてはスガキヤのラーメンを食べた気がしないくらいです。若い女性や家族連れが多いので「火傷防止」のためにぬるくしているのでしょうか。

台湾ラーメン

台湾ラーメンもあります。ひき肉、ニラ、ニンニクに赤唐辛子の真っ赤っか大辛麺。トッピングだけが独立して「台湾」になり、ご飯にかけたり酒の肴になったりしています。もちろん台湾ラーメンは台湾にありません。名古屋周辺にだけあります。

私が個人的に名古屋名物と思っているのは「ブラジャー丼」です。

ブラジャー丼

昭和50年代に岐阜県のある陶房で開発されたものですが、名古屋の町を歩いているとほんとうによく見掛けます。JR名古屋駅の地下街にもこれを何種類も組み合わせて食べさせる店がありますので(つぶれてないと思います)、ついでがある人は観察してみてください。

ブラジャー丼というのは「偏食アカデミー」周辺の呼び方で、地元では「めおと丼」とか「双子丼」とか呼ばれています。名古屋で「ブラジャー丼ください」などと注文すると、はり倒される危険がありますので注意してください。

のりトースト

このほか、アカデミーで取材した名古屋系物件として「うなぎバーガー」があります。ハンバーガーの中身がうなぎの蒲焼きと思ってください。これもチョコレートパフェなど甘味系と合わせます。

あと「ねぎとろサンド」など和風のサンドイッチばかり売っている店があるというので取材を試みましたが、閉店した直後でワヤになってしまいました。食べたかったなあ、ねぎとろサンド。名古屋のねぎとろサンド(わさび醤油味)と東京ののりトースト(七味醤油味)が闘ったら金網デスマッチに……このパターンはさっき使いましたね。

東京名物?

のりトーストというのは多分東京名物。日経の夕刊に書いたことがありますので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。どうしても知りたいという方は私の名前で検索してください。どこかののり屋さんがHPに引用しています。

メールの中には「近く名古屋に転勤になります」というのもありました。広東と同じくらい面白いかもしれませんよ(ご本人以外には何のことかわからないでしょうが)。

「あんバタ」情報。

パンにあんこ
ご意見 これは盛岡市とその周辺にはとてもなじみが深いものです。「福田パン」という地元では有名なパン屋さんが「コッペパン+あんこ+バター」という組み合わせのパンを、もう何十年も前から出しており、その人気たるやほかの具の追随を許さないといった具合です。盛岡にお寄りの際はぜひスーパーなどをのぞいてください。本店もしくは工場に行くと目の前で具を詰めてくれます(さるるる@現在は横浜市在住さん)
ご意見 小さいころ長野県松本市で目にしたように記憶しています。確か「あんバタサンド」として店で売られていました(NHKの塩田さん)
蛍イカで一献

最初のご質問に対する直接的なお答えにはなっていませんが、類似の食べ物があっちこっちにあるようですね。

昨日、都内某所の居酒屋でホッピーを飲みながら蛍イカの刺し身かなんか食べていたら(ホッピーというのは東京名物おじさん仕様飲料。若い女性が飲んでいるところを見たことがない)、隣のテーブルにいたおじさん三人組が「口から点滴だあ」とキャッキャ言いながら飲んでいた。

「口から点滴」って、みんな同じようなおやじギャグを考えるものである。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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