アニメーター出身ならではの芸術作品
サーチギャラリーの展覧会「START ART FAIR 2021」に米山が出展した作品『00:00:00:00』(シーケンス)は、アニメーターとして活躍してきた米山だからこその作品として、現地でも大きな話題を呼んだ。
この作品は、花言葉に象徴される、あどけないフリージアから、純潔で威厳ある百合まで、花と少女を描いた16枚の連作だ。1枚1枚が1つの作品として成立しながら、連続して再生すると、少女の進化や変身を感じさせる華やかな動きが花開くという、アニメーターだからこそ描けた、繊細かつ“動き”ある連作となっている。

作品に近づくと、その絵が普通のキャンバスに描かれたものではないことが分かる。
背景の花に5mm厚のアクリルを乗せ、前面に少女をUV印刷(※)し、レイヤーを重ねたような奥行きある空間を表現。瞳や線にはニスインクを施し、さらにネイルポリッシュで水滴を付けて、角度によって光や影の印象が変わる美しい技法で仕上げているのだ。[※UV印刷は紫外線で硬化する樹脂を使用する印刷技法]
「もともと『00:00:00:00』は、別のグループ展に出品したものです。グループの他の作家さんたちも、ゲームやライトノベルといった様々な媒体で活躍されている方々。そこで、自分の強みやパーソナルを生かせる表現方法を考え、1枚じゃなくてもいいかな、説得力があるものにしたいなと思って、連作にしました。
アニメーションは、物語の内容を伝えることと、キャラクターを動かす技術の両方が大切で、それが両方合わさって絵的な説得力になります。人の気持ちや心理的な理由、場面の説明まで全て、絵で表現して伝えることがアニメーターに求められる技術です。そしてそれが、自分の強みかなと。アニメの現場にいる人にとってはなんてことない表現でも、軸をずらしてイラストレーションに置き換えたら、誰もやっていない、しかも自分に嘘がない表現になると思い、こういった表現に至りました」(米山舞、以下同)