ガートナーは「ベンダーはすでにユーザーがデジタル化された世界で生活を体験するための空間やサービスを構築しており、仮想クラスルームへの出席から、デジタル空間上の土地の購入、仮想住宅の建築に至るまで、将来的には、単一の環境であるメタバースのなかで行われるようになる」と分析する。

メタバースは消費者が日々接するあらゆるビジネスに影響を与え、働き方にも影響を及ぼすとみているわけだ。26年までに世界の組織の30%がメタバースに対応した製品やサービスを持つとも予測する。

すでに取り組みは始まっている。

KDDIと一般社団法人渋谷未来デザイン(東京・渋谷)、一般財団法人渋谷区観光協会(東京・渋谷)を中心とする「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は渋谷区公認の仮想空間として「バーチャル渋谷」や「バーチャル原宿」を開設。仮想空間内にリアルな街並みを再現し、買い物などができるようにした。

KDDIなどは東京・原宿の街を再現した「バーチャル原宿」をオープン

三越伊勢丹ホールディングスもネット上の仮想空間に伊勢丹新宿本店を出現させた。買い物客は自宅で仮想空間上の百貨店を歩き回り、実際に買い物もできる。買った商品は現実世界の自宅に届けられる。

三越伊勢丹ホールディングスはネット上の仮想空間に伊勢丹新宿本店を出現させた

メタバースは職場にも広がる。前述したようにマイクロソフトが22年内にチームズに追加予定の仮想空間で会議できる機能を使えば、仮想空間内の会議室などに社員や関係者がアバターで参加して、没入感のある会議ができる。現実空間と同じように、偶然のすれ違いから会話が生まれ、そこで新たな発見につながるといったことの再現が狙いの一つだ。テレワークで希薄になった社員間の接点を補完できる可能性があるとみているわけだ。

マイクロソフトは協業アプリ「チームズ」に仮想空間で会議できる機能を追加する

まだ緒に就いたばかりのメタバースだが、数年後には仕事のやり方や生活を大きく変えそうだ。

大河原克行
ジャーナリスト。30年以上にわたって、IT・家電、エレクトロニクス業界を取材。ウェブ媒体やビジネス誌などで数多くの連載を持つほか、電機業界に関する著書も多数ある。