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ケミカルリサイクルの実証実験も

ガンプラリサイクルプロジェクトで回収された廃材は、焼却する際に発生する熱エネルギーを使って発電を行う「サーマルリサイクル」、廃材を溶かしてペレットに加工し、再びガンプラによみがえらせる「マテリアルリサイクル」、廃材を化学的に処理し、原料に戻して再利用する「ケミカルリサイクル」という3つ方法でリサイクルされる。

このうちケミカルリサイクルは、合成樹脂の製造や販売、研究開発を行うPSジャパン(東京・文京)とBANDAI SPIRITSが連携し、実証実験を進めている。ガンプラのランナーはさまざまな色に着色されていることもあり、熱分解によって液体に戻しても、不純物などのために茶色く濁ってしまう。このため、プラモデルの原料であるスチレンモノマーだけを抽出することが困難だった。

しかし、両社は今回、ガンダムR作戦で回収した使用済みランナーを用いた実証実験で無色透明なスチレンモノマーを精製することに成功。現時点では一度に精製できる量がまだ少なく、品質を含めて実用化には多くの課題が残されているものの、リサイクル材100%のガンプラ実現に向けて一歩前進したことを発表した。BANDAI SPIRITSでは、いずれすべてのプラモデルへのリサイクル材の使用を目指している。

会場内にしつらえられたフォトスポットには、全高約2メートルという巨大なガンダム像が。背景が巨大なランナーで装飾されているところもこのイベントらしさが感じられた
「ガンダムR作戦」の会場ではリサイクル材を用いて作られたエコプラなど全15種類の販売も行われた。この15種にはガンプラだけでなく、恐竜の骨格をかたどったプラモデルも含まれる。リサイクル材ならではの暗褐色のモノトーンで構成されたガンプラには独特の精悍(せいかん)さが感じられ、これはこれで魅力的
BANDAI SPIRITSとPSジャパンが共同で進めてきた実証実験では、茶色く濁った液体から無色透明なスチレンモノマーの抽出に成功したとのこと。実用レベルになるにはまだそれなりの時間が必要となりそうだが、「ガンプラリサイクルプロジェクト」にとってかなり希望が持てる結果と言えるだろう

(文・写真 稲垣宗彦=スタジオベントスタッフ)

[日経クロストレンド 2021年12月15日の記事を再構成]

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