メタバース世界が注目 ネット会議にアバターが出席?
1日の大半をネット上の仮想空間で過ごす──。映画やアニメで描かれてきた未来が現実になろうとしている。これが最近話題の「メタバース(仮想空間)」だ。もともとは米国のSF作家が1992年の小説で登場させた言葉で、「Meta=超越した」と「Universe=世界」を組み合わせた造語。自分の分身となる「アバター」が現実世界のように生活する仮想空間を指す。
実はメタバース自体はそれほど目新しいものではない。2003年にサービスを開始した「セカンドライフ」がその先駆け。3次元(3D)の仮想都市で住人同士が交流したり、土地を買ったり、商売をしたりと"第2の人生"が楽しめることで人気を集めた。身近な例では、任天堂の家庭用ゲーム「あつまれ どうぶつの森」もメタバースといえる。
メタバースが一躍脚光を浴びたのは、21年10月末にフェイスブックが社名をMeta(メタ)に変更したのがきっかけ。主にSNS(交流サイト)を手がける同社が今後、メタバースを事業の柱とする方針を明らかにした(図1)。同社が目指すメタバースは、今の仮想空間よりさらに現実と融合し、没入できる世界だ。
そのカギを握るのが一般に仮想現実(VR)ゴーグルと呼ばれる周辺機器(図2)。これでユーザーの視覚と聴覚を仮想空間に没入させ、さらに触覚コントローラーや各種センサーなどの新技術を駆使して、身体の動きをアバターの動作に反映させる。
ネット会議もアバターで
すでにゲームや音楽ライブなどのエンターテインメント分野で先行するメタバースだが、将来的には仕事や学習、運動といった幅広いジャンルへの展開が見込まれる。特にコロナ禍における社会情勢の変化は新たな用途を生み出した。それがMetaに加えてマイクロソフトも参入するオンライン会議だ(図3、図4)。身ぶり手ぶりから表情までもアバターで再現し、仮想空間の会議室などでコミュニケーションを深めるのが狙いだ。
メタバースへの参加に、VRゴーグルのような機器は必須ではない。マイクロソフトはユーザーのカメラ映像や音声を、アバターの表情や動きに反映させる技術を開発している。
現状、明確な定義がないメタバース。前述のような仮想空間ではなく、現実世界にメタバースを投映する「拡張現実(AR)」や「複合現実(MR)」を理想と考える企業もある。今後、既存のサービスが拡張されてメタバースが実現するのか、あるいはまったく新しいプラットフォームが生まれるのか、主導権争いから目が離せない。
(ライター 五十嵐俊輔)
[日経PC21 2022年2月号掲載記事を再構成]
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