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難易度の高い曲がトップ3に

2位はYOASOBIの「夜に駆ける」、3位にはAdoの「うっせぇわ」が入った。前者は、高速に駆け抜けるように歌う部分、後者には地声と裏声を巧みに使い分ける部分がそれぞれにあり、それゆえ動画系アーティストの作品として10代や20代の人気が絶大なわけだが、30代でも変わらず人気となっている。さらに驚くことに、40代でもこのトップ3は全く同じ。かなり難易度の高い、仲間とのカラオケで歌うには勇気がいる楽曲なのだが、これらが上位を占めるということは、1人カラオケが定着し、上級者だけがカラオケを楽しむようになったのだろうか。

または1人カラオケだからこそ、人の目を気にせず歌えるようになったということか。“おうちカラオケ”により、練習量が増えたということも考えられそうと、いろいろ想像が膨らむトップ3となっている。ちなみに、7位に入ったEveの「廻廻奇譚」(アニメ『呪術廻戦』オープニングテーマ)も、高速なロックチューンだ。

10位以下を見ていくと、11位に「Lemon」、16位に「感電」と、米津玄師の楽曲が2曲ランクイン。総じて繊細な描写による楽曲の世界観が人気の米津だが、この2曲は、米津作品の中では比較的歌いやすく、ともにドラマ主題歌(前者が『アンナチュラル』、後者が『MIU404』)ということもカラオケ人気につながっていそうだ。ちなみに、15位のKing Gnu「白日」もドラマ主題歌(『イノセンス 冤罪弁護士』)。これらの3曲は40代でもほぼ同じような順位にランクインしている。90年代から00年代、カラオケ人気曲の多くはドラマ主題歌が占めていたが、それを体感してきた30代・40代では、今なお密接に関係しているのだろう。

17位にはポルノグラフィティの「サウダージ」がランクイン。2000年のヒット曲で、もともとカラオケでも人気だったが、一発録りで人気のYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に登場したポルノグラフィティが同曲を歌ったことで、カラオケでのさらなるヒットにつながった。

4位の優里「ドライフラワー」、9位のKanaria「KING」といった10代・20代に人気の最新ヒットも歌われつつ、アニメやドラマのタイアップ曲の上位入り、さらには懐かしいJ-POPも見られる。このバランス感覚の良さが30代らしさなのかもしれない。

臼井孝
 1968年生まれ。理系人生から急転し、音楽マーケッターとして音楽市場分析のほか、各媒体でのヒット解説、ラジオ出演、配信サイトの選曲(プレイリスト【おとラボ】)を手がける。音楽を“聴く/聴かない”“買う/買わない”の境界を読み解くのが趣味。著書に「記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝」(いそっぷ社)。渋谷のラジオにてレギュラー番組『渋谷のザ・ベストテン』放送中。 Twitter @t2umusic