1度読んだ本を次は音声で
そして3つ目が「コンテンツの拡充」だ。既存の作品を音声配信することで新たな魅力を引き出す取り組みや、ジャンルに特化した新たな音声配信サービスが誕生するなど、“聴くエンタメ”は広がり続けている。
その代表例が(5)「オーディオブック」。ナレーターや声優などが書籍を朗読するもので、「audiobook.jp」や、Amazonが提供する「Audible」などがある。Spotifyも昨年5月にスウェーデンで、オーディオブックのプラットフォーム「Storytel」とのパートナーシップを発表。今後、国内外で動きがさらに活発になっていきそうだ。
また、書籍を持つ出版社側が積極的に音声メディアを使うケースも登場。新潮社は、Audibleとの共同制作で、小説を音声で先行配信する「オーディオ・ファースト」をスタートした。第1弾は芥川賞作家の川上未映子による書き下ろし小説で、俳優・岸井ゆきのが朗読を担当する。英語やドイツ語でも配信予定で、同シリーズでは三浦しをんの書き下ろし小説も今後控える。
前出の緒方氏も、オーディオブックには注目しており、「何か作業をしながらでも本を読めることに、多くの人が魅力を感じているようです。特に1回文字で読んだ本を聴き流して復習するような使い方をしているケースも目立ちます。実用書、ビジネス書などで人気が高まっているのでは」と話す。
活字情報を音声化する動きは、(6)「音声付きテキストサービス」も同様。ビジネス書などの要約サービスを展開する「flier」は、要約記事を1コンテンツあたり15分ほどで聴ける「音声版」を提供している。読む時間を確保できない人が、移動中などに効率的に情報を得られるようになった。
また、ソーシャル型経済メディアの「NewsPicks」は、19年からAudibleと連携し、人気コンテンツの音声番組を配信してきたが、21年9月からはさらに連携を強化。会員限定向けの人気特集記事を音声化して配信している。
芸人たちの“ラジオ風”番組
さらに(7)「音声エンタメ」も活発化。オーディオドラマやお笑い芸人の“ラジオ風”番組を提供するサービスが出てきている。
21年4月にスタートしたサブスクリプションサービス「NUMA」では、神木隆之介や大谷亮平、今泉力哉監督といったキャスト&制作陣による本格派“イヤードラマ”を展開中。19年にスタートした「GERA」では、ラランド、ヒコロヒー、ザ・マミィといった約40組の若手お笑い芸人たちが、ラジオのようなトーク番組を毎週配信しており、無料で楽しめる。
(ライター 小沼理=かみゆ)
[日経エンタテインメント! 2021年11月号の記事を再構成]