VTuber事業に続々参入 50人超デビュー目指す事務所も

イラストで描かれたキャラクターがYouTubeで配信を行うバーチャルYouTuber(VTuber)の展開が、エンターテインメント界で広がりを見せている。
スターダストプロモーションは7月、バーチャルタレント事業を担う新レーベル「スターダストバーチャルスタジオ(SVS)」を発足。所属俳優やタレントのバーチャルキャラクターを制作、個人で活動するVTuberとも業務提携していく。日本テレビもVTuber事業「V-Clan」を設立。さらにYouTuberのヒカキンがVTuberとしても活動することを発表。ホロライブEnglishの一員として、英語圏のファン向けにゲーム配信などを行うGawrGura(がうる・ぐら)はVTuber史上初のチャンネル登録者数300万人を達成し、海外からの注目度も高いなど、話題は尽きない。
活況を呈するVTuber界だがソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、次世代のバーチャルタレントを発掘・サポートする新プロジェクト「VEE」の始動を発表し、本格参入を打ち出した。
SMEがVTuber事業に乗り出した背景には、自社のソーシャルクリエーターレーベル「Be」の存在がある。2020年6月よりYouTuberの運用・マネジメント業務を目的として動いていた「Be」プロジェクトだが、そのなかから「VTuber専門の事務所を作りたい」という案が上がり、「VEE」が産声をあげた。
SME傘下のソニー・ミュージックレーベルズの社内レーベル・SACRA MUSICには輝夜月(かぐや・るな)、月ノ美兎(つきの・みと)といったVTuberがアーティスト活動を行っているが、「VEE」が目指すのはアーティストの発掘ではなく、様々な才能が集結するバーチャルタレント事務所の設立。
「レーベルだと音楽となるが、VTuberの持つ個の面白さ、例えば将棋を指すでもいいし、様々な才能を発掘したい。その上でタレントの能力を引き出せるよう、マネジメント業務に注力していく」とVEE事務局(以下同)は語る。
オーディションは募集が始まると、プロモーションを大々的に行っていないにもかかわらず、約3週間で数千件の応募があった。

「"人生を変えたい"と熱意を持った方が応募してくれている。これから始めるという方、既に個人勢(事務所に所属せず活躍しているVTuber)として活動している方からの応募も。我々としては、海外展開を視野に入れて、グローバルで勝負できるような才能に注目している」
本プロジェクトは、22年いっぱいで50人以上のバーチャルタレントをデビューさせることを目標に掲げる。1期生、2期生と順々にデビューさせ、コラボレーションしていきながらグループ全体の魅力を打ち出し、"箱推し"を増やしていく狙いだ。「所属タレントには、オーディションをゴールと捉えずに、『VEE』という箱をみんなで成長させていく意識を持ってほしい」
ソニーミュージックグループの事業を横断した展開も視野に入れている。傘下のソニー・ミュージックアーティスツではミュージシャンをはじめ、俳優・芸人・声優など幅広いジャンルのマネジメント業務を行っており、同じくアニプレックスは日本最大級のアニメ制作会社だ。VEE事務局は「今後は、各部署と上手に連携しながらグループシナジーを最大化させ、所属タレントの力も借りつつ、バーチャルの世界を盛り上げていきたい」と話す。
20年8月には、所属アーティストの米津玄師がバトルロイヤルゲーム『フォートナイト』内でライブを開催して話題となったが、「人間とVTuberが当たり前に混在するような空間を提供して、シーンを活性化させていきたい」と意気込む。SMEが本格参入することで、既存のVTuberも活躍の場が広がり、ますます市場は盛り上がりを見せていきそうだ。
(ライター 中山洋平、日経エンタテインメント! 平島綾子)
[日経エンタテインメント! 2021年10月号の記事を再構成]
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