歌うときは腹式呼吸なので、お腹の筋肉を使います。腹式にはお腹を引っ込めて息を支えるやり方と、お腹を前に出すやり方があって、僕は基本的には引っ込めます。ただ、ずっとそのやり方だと筋肉が疲れてきて、先日もトレーナーの方に「筋肉がだいぶ硬くなっていますね」と言われました。なので、そこから3日間くらいは逆にお腹を前に出す歌い方をしたら、すごく楽になりました。でも、しばらくすると、また筋肉が疲れてくるから、最終的には歌のときはお腹を前に出して、セリフのときは引き上げるように使い分けました。そんなふうに、日々工夫して体をケアしながら、毎日の公演に臨んでいます。

体力を維持するために、食べ物にも気を配ります。歌う人は舞台の前に食べないという人も多いのですが、僕は逆に必ず食べるようにしています。集中しているから基本的に空腹感は感じないのですが、本当にお腹がすいていると、「力が出ない」と感じる瞬間があって、そうなるのが一番怖いのです。1日2回公演なら2回目が始まる前に何か食べるし、休憩中も「お腹がすいてないかな」と確認します。何を食べるかは決まってなくて、休憩中ならどら焼きやクッキーを食べたり、公演の合間だと麺類やお弁当だったり、何でも食べますね。エナジードリンクや栄養剤は飲みません。元気な気持ちになると思うのですが、それで例えば、跳べない階段を跳べる気持ちになったけど、足が上がってなくてけがをするというのが怖いんです。疲れはそのまま受け止めるというタイプですね、僕は。

毎回の公演にいかに新鮮な気持ちで臨むか

精神面では、長期間の公演中、モチベーションをどう保つか。どうしても慣れてきてしまうので、いかに新鮮な気持ちで演じられるかがテーマです。その新鮮さを保つやり方も、年々いろいろ経験して身につけたことが多いような気がします。

若いころは、帝劇のような大劇場だと、歌は客席のみんなに聞こえるし、踊りも見えるだろうけど、お芝居は細かいことをしてもどうなんだろう、という気持ちがあって、特に大きなミュージカルだと大味な演技になりがちでした。でも今は、見える見えないというのが問題ではなくて、確かに遠くのお客さまには見えないかもしれないけど、そこで出てくる場の空気は必ず伝わるということが分かったので、すごく集中してやれています。3年前の『ナイツ・テイル』の初演に比べても、意識がずっと途切れずにできているので、新鮮な気持ちでやれているように思います。

慣れてしまわないように、その日のテーマを見つけてやってみるという工夫もしています。最近だと、極力手を使わずに演技をしてみたことがありました。欧米人はよく手を広げて、大きなアクションをしますね。そういうことを自然に僕たちもやっていると思うのですが、どうして手を使っているのだろうと思った瞬間があって。手を使わないとなると、「これってどういう意味だったっけ」とか「ちゃんと言葉で伝えなきゃ」という意識が働き、お芝居がやりやすくて、これも新鮮でした。手の動きが振りのように決まっている箇所もあるので、それで表現した気になっていたのですね。

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舞台が始まるまでの気持ちの持っていき方