幅広い読み手獲得、女性が読む理由

第6号を出すあたりで、本物の廃刊危機を迎えた。創刊からちょうど1年を迎えていたが、部数は上向かず、打ち切りが真剣に議論されたという。このタイミングで編集部は思い切った路線変更に踏み切った。それは「中高生向けからの離脱」。もともと「コース」誌を母体としていたので、中高生への目配りはきかせていた。読者層に合わせた言葉遣いやテーマ選定も続けていたので、「今に比べれば、踏み込みの度合いに限界があった」(三上編集長)。そのどっちつかずの立ち位置が大人読者を遠ざける一因ともなっていたようだ。

当時の編集部が至った結論は「どうせつぶれるなら、最後は好きなようにやろう」。それまでは中高生読者に配慮してきた編集方針を一転させ、大人向けの読み物主体に切り替えた。80年に出した第7号から「ムー」はそれまで柱の一角だったSF小説や漫画を削って、マニアックなストーリー物を増やした。

「ムー」の三上丈晴編集長

UFOや超常現象を扱うという基本スタンスは保ちながらも、掘り下げの深さを変えた。目指したのは「読み込んでもらえるタイプの雑誌」(三上編集長)。中高生向けの案内的な記事を減らし、大胆な仮説を前面に押し出した。ノンフィクションタッチの記事を増やしたのも主な変更ポイント。諸説を紹介しつつ、読者の判断に委ねるという、今に至る編集スタイルの原型が出来上がっていった。

勝負をかけた第7号では巻頭の特集に「[大推理] 古代核戦争の謎」を掲げた。踏み込んだ推理を押し出すスタイルは今に続く原型とも映る。その他の企画も「痛快!!忍術入門」「世界のミイラの秘密」「タイム・マシンはつくれるか?」など、それまでの号以上にスリリングな見出しが並んだ。インタビューでは霊界研究者としても知られた俳優・丹波哲郎が登場。たっぷりと持論を語っている。

廃刊リスクを引き受ける格好でのチャレンジだったが、結果は当たった。部数が上向き、廃刊を免れた。三上編集長は「大人向けに振り切ったのが正解だった。サイエンスや歴史、文明、自然をまじめに面白がる姿勢も読者の支持を受けた」とみる。2年目で危機を脱し、3年目に入った82年からは月刊化を果たした。

同時に、大人の読者が増えて、読者層も広がった。現在の読者属性は男性が64%、女性が36%。年齢は30代が最多の34%で、以下、20代26%、40代20%、50代11%、10代9%と、幅が広い。中高生にこだわらず、年齢のレンジを広げるという判断は結果的に正しかったとみえる。

趣味性の強い雑誌の場合、読者層が性別や年齢層の偏りを生じがちだ。しかし、「ムー」は中身が極めて特殊なのに、読み手のばらつきが大きいという異形の支持を得ている格好だ。

40周年記念号の目次

職業別では会社員が最多の39%。次に多いのは主婦の28%で、学生の18%が続く。主婦層が3割近いのは意外な感じもあるが、三上編集長は「占いや金運、スピリチュアル、パワースポットなどへの関心が強い」と明かす。

こうした女性読者のニーズを意識して、「ムー」ではこれらの分野に関連した記事を載せることが多い。2021年11月号では運気を高めたい人向けの「翡翠玉開運術」を掲載、同10月号には「開運符」をとじ込み付録で添えた。開運をうたった商品の広告もしばしば掲載されていて、「ムー」の収益面を支えている。

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