「ムー」創刊1年で廃刊の危機! 起死回生の秘策とは!?三上丈晴「ムー」編集長(下)

「ムー」2021年11月号の表紙

「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリー・マガジン」とうたう月刊誌「ムー」(ワン・パブリッシング)は自らにもミステリアスなところが多い。たとえば、なぜまじめな学びのイメージが強い学習研究社(現在の学研ホールディングス)から創刊されたのか。雑誌タイトルは何の意味なのか。そして、誰が読んでいるのか。三上丈晴編集長がこれらの秘密を一気に解き明かしてくれた。(前回の記事「編集部は5人!? 創刊42年ナゾ雑誌「ムー」の秘密に迫る」)

創刊した1979年10月当時は「オカルト」と呼ばれた超常現象や怪奇伝説などが盛り上がっていた。作家の五島勉が73年に書いた「ノストラダムスの大予言」は大ベストセラーになった。同じ年に漫画家の矢口高雄は伝説の生き物「ツチノコ」を題材に漫画「幻の怪蛇バチヘビ」を発表している。テレビは特集番組を組んで、「超能力者」と名乗るユリ・ゲラー氏を取り上げ、UFOの謎を追った。共に悪魔にまつわるホラー映画「エクソシスト」が74年に、「オーメン」も76年に公開された。要するに、世の中には不気味さやミステリーを求めていた。

「もともとは中高生向けの雑誌として創刊されました」と、三上編集長は当時の事情を明かす。「科学と学習」と総称された学習雑誌で知られていた学研が当時の版元。「謎と不思議」を扱うミステリー誌は畑違いに思えるが、学研が発行していた、中高生向け学習雑誌「中学一年生コース」や「高1コース」などの「コース」シリーズが母体。「企画記事でUFOや超常現象を取り上げたところ、人気が出たので、そういったテーマに特化した新雑誌を立ち上げようという話になった」(三上編集長)。創刊を伝えた「日経産業新聞」(1971年8月15日付)の記事でも「学習研究社は10月上旬、中、高校生向け新雑誌2誌を創刊する」と書かれている。

「コース」シリーズからの派生雑誌として誕生した。学習雑誌は学びに役立つ情報を載せていたが、「まじめな記事ばかりでは面白みに欠けるので、中高生が関心を持つような話題も盛り込むようになっていった」(三上編集長)。テレビや映画でブームを呼んでいたUFO・超常現象系の読み物も人気を集めたという。それらの企画が好評だったことから、スピンアウト的に創刊が決定。当初は隔月刊でのスタートだった。

しかし、立ち上がりから苦戦が続いた。「コース」誌内での企画では好評でも、全部のページが謎だらけの構成は、中高生には重たすぎたのかもしれない。創刊号の総力特集は「異星人は敵か味方か?」。その他の企画も「超常現象の世界」「人類最後のロマン 地底世界伝説」「吸血鬼」など、いずれも「ムー」らしい濃い口。意外なところでは永井豪&石川賢の劇画も載っている。このあたりに「コース」誌の名残がうかがえる。

ちなみに、印象的な雑誌タイトルは、かつて太平洋にあったという伝説が残る超大陸「ムー」から取った。創刊号に明記されている。幻の大陸という意味ではアトランティスでもレムリアでもよかったはずだが、わずか2文字のインパクトと、「無」に通じるミステリアスな響きなどが選ばれた理由とも見える。当時の話題にもなっていたようで、創刊第2号の総力特集でも「幻のムー大陸は実存した!?」と、大々的に取り上げている。

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