02. いつでも手を伸ばせること
鴨志田さんの一生大定番ブランド(2)
■ALDEN(オールデン)
オールデン上陸直後に購入したというコインローファー。現行品とは仕様が若干異なっていて、こちらはつま先部分に芯地を入れない仕立てが特徴。見た目にも柔らかいフォルムとなり、往時はこれがツウと証とされていた。

履きやすく、合わせやすい。
――そんな靴だからこそ、一生付き合える
靴というものは、装いを決定づける仕上げの一手です。同じスーツ・シャツ・タイを着ていても、最後にどんな靴を合わせるかで印象がガラリと変わってしまう。逆にいえば、靴を見ればその人のスタイル(美意識)がわかるといっても過言ではありません。そして、僕のスタイルを象徴する靴といえば、やはりオールデンということができるでしょう。
その存在を知ったのは1980年。オールデンが初めて日本上陸を果たしたときのことです。「ブルックス ブラザーズのローファーを製作しているメーカー」という触れ込みで、ビームスが最初に取り扱いを始めました。僕を含む当時のトラッド青年たちにとっては衝撃的な存在で、まさに鳴り物入りといった様子でしたね。それまではバスやコール ハーン、ジョンストン&マーフィーといった靴を愛用していた人たちが次々とオールデンに魅了されていきました。もちろん僕もそのひとりで、上のローファーを早速購入。以来40年以上にわたって、自分のワードローブからオールデンが外れたことは一度としてありません。
その一番の魅力は、圧倒的な汎用性にあると考えています。ウーステッド生地のスーツ、つまりビジネス色が強いウエアには合いませんが、コットン、リネン、フラノ、ツイードといったスーツ・ジャケットからブルージーンズまで合わせることができる。僕はあまりウーステッドのスーツを着ることがないので、オールデンはワードローブ全域をカバーしてくれる万能シューズといえるわけです。
僕にとってオールデンは、ピカピカに磨き上げて履くような靴ではありません。日本的にいうなら“つっかけ”のように、いつでも気楽に履いて出かけられる靴です。言い換えるなら、オールデンもリヴェラーノと同様に、僕が最も自然体でいられる靴なのです。
僕が考える一生大定番の条件・その2は「汎用性」です。着こなしを選ばない懐の深さがあるからこそ、一生愛用できる定番となりうる。オールデンはまさにその好例で、事実僕も移り変わる時代の中で、アメリカンクラシック、フレンチアイビー、イタリアンクラシックと様々なスタイルに傾倒しつつ、そのすべてにオールデンの靴を合わせてきました。人から聞いた話ですが、かのジョルジオ・アルマーニ氏もオールデンを履いていたそうです。いかにスタイルを横断して愛される靴かを物語るエピソードですね。
際立つ品格を宿すジョンロブや高貴なリラックス感を象徴するベルジャンシューズも、僕にとってはかけがえのないスタンダードです。しかしながら、いつでも手(足)を伸ばせる汎用性を備えたオールデンこそ「一生大定番」という壮大なテーマの答えになるはず。そのように考えました。(談・鴨志田康人)
リラックスしたスタイルにもオールデンが欠かせない
山形のニットメーカーで個人的に製作してもらったというカシミヤニットに、米国ウォレス&バーンズの5ポケットピケパンツ、オールデンのプレーントウといういでたち。「アイビーをファッション原体験とする自分にとって、ジーンズのときでも足元はスニーカーより革靴、というマインドがあります。気楽さや若々しさも備えたオールデンは、そんな志向にもぴったりはまるんですよね」

特によく履くのはローファーとキャップトウ
様々なモデルのオールデンを所有する鴨志田さんだが、中でもキャップトウやローファーは色・素材違いでそろえている。タッセルローファーも大のお気に入りで、「自分にとっては最高の完成度」と鴨志田さん。意外にもVチップはあまり履かないそうだが、「いつか出番がくるはず」としっかり購入している。


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