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死亡リスクが最も減少するのは週に30~60分

続いて、筋トレの実施時間とリスク低下幅の関係を検討しました。総死亡、心血管疾患、あらゆるがん、糖尿病の発症のリスクについて、1週間あたりの筋トレ時間が10分増加するごとのリスクの変化を分析することができました。その結果、総死亡、心血管疾患発症、がん発症のリスクと筋トレ時間の関係はJ字カーブを描き、1週間に30~60分の人たちにおいてリスクは最小となりました(表1)。

表1 筋トレをする人たちのリスク低下

(出典: Br J Sports Med. 2022 Feb 28;bjsports-2021-105061.)

筋トレ時間がそれよりも長くなるとリスク低下幅は小さくなり、週におおよそ100~120分になると、筋トレを全くしない人々との間の差は有意ではなくなりました。さらに筋トレの時間が延びると、週に170分あたりから死亡リスクが、190分あたりから心血管疾患の発症リスクが、筋トレを全くしない人よりも有意に高くなっていました。がん発症リスクについては、今回分析が可能だった、最大で週に150分程度の筋トレではリスク上昇は有意にはならず、上昇傾向を示すにとどまりました。

一方で、糖尿病と筋トレの関係はL字カーブに近く、筋トレ時間が長くなるほどリスクは低下する傾向を示しました。糖尿病リスクの低下は、1週間の筋トレ時間が60分になるまで急速に大きくなりましたが、それ以降はゆるやかな低下を示しており、筋トレがもたらす糖尿病リスク低下の恩恵のほとんどは、週に60分の筋トレにより得られることが示唆されました。

著者らはさらに、筋トレと有酸素運動の組み合わせの影響を、それらを行わない人と比較しました。その結果、筋トレと有酸素運動を組み合わせることで、総死亡、心血管疾患、がんのリスク低下は28~46%となり、相加効果が得られていました(表1)。

今回得られた結果は、筋トレが健康に長期的な利益をもたらすこと、有酸素運動との組み合わせによってさらに利益が増すことを示した一方で、やり過ぎは健康被害をもたらす可能性があることを示唆しました。

[日経Gooday2022年5月18日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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