70年代のフォークブームは、フォークシンガーがファッションもイケてる時代であった。基本、彼らのスタイルはベルボトムのジーパン(ジーンズではなくジーパン)に、チェックのウエスタンシャツやネルシャツや、ナンバリングが入ったカレッジTシャツなどを着て、靴はキャンバス製のズック(スニーカーという呼び方はまだなかった)。もちろん髪形は耳まで隠れる肩まで伸ばしたロングヘアー。いわゆるアメリカ西海岸のヒッピーファッションである。たくろうも、陽水(井上陽水)も、泉谷しげるも、小室等も、「かぐや姫」の南こうせつや山田パンダや伊勢正三も、先日亡くなった山本コウタローも、みんな当時渋谷の道玄坂にあった「シップス」の前身の『ミウラ&サンズ』の店員のような格好をしていたのだ。

70年代ファッション 映像が掘り起こす記憶

どんなにレコードが売れてメジャーになろうとも、いつもベルボトムのジーパンにシャツの裾を出してスニーカーというスタイルで、アコースティックギター1本で歌っていた吉田拓郎氏。彼のなにがすごいって、今ではごく当たり前のことだが、単独全国ツアー、大規模野外コンサート、アーティストによる会社設立など、どれも日本で最初にやったのは吉田拓郎氏なのである。

吉田拓郎らのフォークを聞きにきた当時の若者たちはファッションも大いに影響を受けた。70年代のフォークブームは、フォークシンガーのファッションもイケてる時代だった

例えば、伝説のオールナイトコンサートと言われている「吉田拓郎・かぐや姫コンサート イン つま恋」。今でいうフジロックのような夏の野外フェスで、75年8月2日と日付をまたいで8月3日の2日間にわたって、静岡県掛川市のつま恋多目的広場で開催された野外オールナイトライブコンサートだ。

原稿を書くにあたり、YouTubeで「吉田拓郎・かぐや姫コンサート イン つま恋」を見たのだが、いやぁー、たくろう、カッコよすぎる! 頭にバンダナを巻いてアコースティックギターを抱えて落陽を歌う姿なんて、まるでボブ・ディラン。つま恋にたくろうを聴きに集まって来た当時の若者たちのファッションもいい。ベルボトムのジーパンにシャンブレーのワークシャツやナンバリングの入ったタンクトップを着て、頭にはみんなチューリップハット。上半身裸でリュックサックを背負ってやってきたバックパッカーの若者もいたりする。ウッドストックのような野外フェスが、日本でも70年代にたくろうたちによって開催されていたのである。筆者も取材で5年前に静岡県のつま恋に初めて訪れた。今でも野外コンサートが開催されたつま恋には、ギターを抱えたヒッピーファッションの若者の像が記念に建っている。

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