東大を6年余りの休学の後に退学

深沢さんは20年、東大を辞めた。休学して6年余り。起業家には卒業証書などあまり意味はないだろう。米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏ら著名起業家は大学中退者が少なくない。筆者は以前、この2人と何度か単独会見した経験があるが、ともに異常なほどの人見知りで、コミュニケーション能力が高いとはいえないタイプだった。

深沢さんは「エンジニア系はそんな感じの人が多いですよね。でも、彼らははじめから英語圏でのスタート。うちもグローバル化を視野に入れているけれど、どうしても言語や文化圏の壁はあるし、学位がないとビザ(査証)は取得しづらいだろうとか、色々考えますね」という。

深沢さんが6年間を過ごした開成中学・高校

大学は中退したが、開成・東大時代に貴重な人脈を手に入れた。いま話題の電動キックボードのシェア事業を手掛けるLuup(ループ、東京・渋谷)。社長の岡井大輝さんら創業メンバーは東大時代からの仲間だ。最高技術責任者(CTO)の岡田直道さんは開成・東大の同級生でもあり、アップブリューでも共に働いた。

後輩にも注目の起業家がいる。米人工知能(AI)系ベンチャーのロバスト・インテリジェンス共同創業者の大柴行人さんだ。開成から米ハーバード大学に進学したが、意外にもアップブリューでインターンシップをやっていた。大柴さんは「深沢さんは大変お世話になった開成の先輩」と慕う。

「人付き合いが苦手」と言いながら、中高時代のつながりを軸に幅広い人脈を築いている。「やはり開成は帰属意識が強いのかな」と笑う。「多感な青春時代を文化祭や運動会で汗を流し、共有する価値観を持つ開成人は『ツー・カー』の関係だ。コミュニケーション能力なんて関係ない」(開成OB)。

日本のコスメ業界で一花咲かせた深沢さん。次の課題はグローバル市場をにらんだユニバーサルサービスの提供だ。コミュニケーション能力が今ひとつのエンジニア系起業家はコロナ禍でも成長のスピードを落とさない。

(代慶達也)