東大を休学し、スタートアップ企業でインターンシップ(就業体験)を始めた。門をたたいたのは12年に起業したばかりのフィンテック企業のfreee(フリー)。当時はまだ社員が10人程度だった。「塾をやっていたとき、たまたまこの会社のクラウド会計ソフトを使っていたので。調べてみると、創業者の佐々木大輔さんは開成出身。フェイスブックでエンジニアとして働かせてほしいとお願いした」という。開成は伝統的に先輩・後輩のつながりが強い。

「ああ、いいよ」と何かと面倒を見てくれた。1カ月余り、米西海岸のシリコンバレーを旅し、佐々木さんからグーグルなどIT(情報技術)企業も紹介してもらい、起業の意欲が芽生えた。「失敗しても何とかなるさ」とビジネスモデルを考えていた頃、パートナーとなる女性と出会う。

コスメ事業で起業した深沢さん(左)と松井さん

共同創業者の松井友里さんはバイリンガルの帰国子女だ。18歳まで米ニューヨークで育ち、東大文科3類に入学した。同期の深沢さんを講義で見かけた程度だったが、友人を通じて親しくなった。

「自分に合うコスメを探すのは大変」

16年に2人で起業して数々の事業にトライし、試行錯誤を重ねた。軌道に乗らず、悶々(もんもん)としていたとき、松井さんから「自分に合うコスメを探すのは大変だ」というつぶやきを聞いた。それがヒントになった。化粧品は世界中に様々な商品があふれ返っている。単純に有名ブランドを使えばいいわけではない。自分のセンスや肌に合うかどうかを見つけ出すのに一苦労する。

そこで、スマートフォンから簡単に口コミ投稿できる美容関連のプラットフォームを開発・運営した。不適切な投稿はチェックし、お勧めのデータなどをもとにアルゴリズム(算出手法)を改善し、コンテンツの品質を確保した。テレビCMも流し、10~20代の女性から支持を集め、ダウンロード数は800万件を超えた。

一方、コロナ禍で化粧品業界は厳しい状況に陥った。もともと収入源は化粧品メーカーからのタイアップ広告だったが、伸び悩んだ。そこで、マーケティングデータ分析の提供など毎月定額制のサブスクリプション型サービスも始め、顧客は100社に増えた。さらに、化粧品のインターネット通販関連事業も立ち上げた。「中国では化粧品販売の約50%がオンラインだが、日本はまだ10%台。今後まだ伸びる余地はある」と話す。投資家の期待は高く、アップブリューへの累計出資額は27億6000万円に上る。

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東大を6年余りの休学の後に退学