
米アマゾン・ドット・コムが読み書きの機能を1つにした電子書籍リーダー「Kindle Scribe(キンドルスクライブ)」を発売した。従来の読書機能だけでなくデジタルノート機能も搭載し、ユーザーが自身のアイデアを書き留めたり、創造性を発揮したりできるようになった。「書く」機能がもたらすKindleの利用体験の進化を探った。
「読む」機能と「書く」機能の両立を目指す
2022年はアマゾンが日本で電子書籍リーダーのKindleを発売してから10年という節目の年。「Kindle Scribe」はその名前が示す通り、シリーズで初めて「書ける」デジタルノートの機能を兼ね備えた新しいカテゴリーのデバイスだ。11月末に出荷を開始し、価格は16GBモデルで4万7980円(税込み、以下同)からとなっている。内蔵メモリーの容量と付属するデジタルペンの種類によりバリエーションが異なる。
ディスプレーには従来のKindleシリーズと同じE Ink(イーインク)の電子ペーパーを採用する。10.2インチの画面サイズは過去最大。アマゾンジャパン(東京・目黒)のデバイス事業本部 Kindle・Fire タブレット・アクセサリー事業部事業部長の清水文弥氏は、アマゾンが異色のKindleを企画した背景を次のように語る。
「Kindleシリーズで電子書籍を読みながら、直感的な操作によりメモを書き残せる機能も欲しいという声が以前から多く寄せられていた。書く機能を加えること自体は難しくなかったが、その結果、本来の電子書籍リーダーとしての心地よい使用感と体験が損なわれることになれば本末転倒だ。Kindle Scribeは筆記に適した10.2インチの大きな画面サイズでありながら、300ppi(1インチ当たりの画素数)の高解像度に対応し『読みやすさ』とのバランスを同時に追求している。結果、様々なユーザーに価値を見いだしてもらえる新しいKindleになったと自負している」

ビジネスにも使えるKindle Scribeの3つの用途
Kindle Scribeには大きく分けて3通りの使い方がある。1つはKindleに対応する電子書籍を「読む」用途だ。Kindleストアで提供されている書籍や雑誌、マンガなどを端末にダウンロードして読める。他にもKindleシリーズで利用可能なコンテンツはすべてKindle Scribeでも対応する。例えば約200万冊の電子書籍が読み放題で楽しめるKindle Unlimited、プライム会員向けの読み放題サービスPrime Reading、自費出版作家の作品がそろうKindle Direct Publishing(KDP)などがある。
2つ目は「書く」用途。こちらはKindleストアが扱う一部対応の電子書籍に、手書きのメモを「付箋」として添付できる機能と、もう一つは白紙のドキュメントにフリーハンドで文字やイラストなど自由に書ける「ノートブック」の機能がある。後者を活用すれば、Kindle Scribeはデジタルノートとして今までのシリーズにない役割が担える。

3つ目が、Eメール経由でKindle ScribeにPDFやWord(docx形式)のファイルを読み込んで閲覧できる「ビューワー」としての用途だ。元のファイルがPDF形式の場合は、専用のデジタルペンで直接書き込みができる。一方Wordファイルの場合は、直接書き込めないが、先の電子書籍と同じく手書きの付箋なら追加できる。
Kindleの電子書籍やWordファイルに直接ペンで手書きをさせない理由は、「元のコンテンツのレイアウトが大きく崩れてしまうから」だと清水氏は述べる。