新型コロナ禍で環境変化、MBAホルダーに注目集まる

これまで「理論を勉強しても現場では役に立たない」「MBAを取得したからといって日本企業では給与に反映されない」などと懐疑論もささやかれてきたが、新型コロナ禍を経てビジネスの環境も様変わりする中で、MBAホルダーの活躍の場が広がり始めているようだ。

ランキング3位、2位には商社・販社、金融・保険が入った。両業界のMBAホルダーの平均年収自体はそれぞれ882万円、947万円と運輸・物流(801万円)、不動産・建設・プラント(846万円)よりかなり高かった。

「もともと年収水準も高いのですが、MBAではコーポレートファイナンスや金融市場に関する体系的な知識を学ぶので、特に自分の実務課題と結びつけて深く学べるし、かつ成果も出しやすい。そういうMBAとの相性の良さもあると思います」(同)

そして業種別ランキング1位に輝いたのは「医薬品・医療機器・医療系サービス・ライフサイエンス」。MBAホルダーの平均年収は912万円で、全体平均との差は491万円に達した。なぜ、この業界でMBAホルダーの年収が高いのか。ここでも大浦さんが指摘するのは、業界内の変革ニーズの高さだ。

ビジネスモデル激変の医薬品業界「MBAホルダー求む」

医薬品業界では、国の医療費抑制方針のもとで医薬品価格が低下。ジェネリック医薬品(後発薬)の普及による利益率の低下などもあり、生き残りをかけたM&A(合併・買収)も盛んに行われてきた。さらにコロナ禍では、医薬情報担当者(MR)が医師に会って直接薬を売り込む営業手法が一変。MRの大幅削減、ビジネスモデルの転換を迫られるなど激しい変化の波にさらされている。

「そうした中でやはり、国内外の環境の変化を冷静に分析し、ファイナンスの知識を使って自分で競合他社の財務分析などもできて、自社のとるべき戦略を描ける人材が必要とされています。当然、高度なマネジメントスキルも必要です。そこで力を発揮できそうなMBAホルダーは出世コースに乗るでしょうし、中途で採用される場合も当然、高い年収が提示されることが多い」

ライフサイエンスの分野ではベンチャーの躍進も目立ち、ここでも専門性を持ちながら経営もできる人材へのニーズが高まっている。「株式市場が冷え込む中、必ずしもIPO(新規株式公開)ではなくM&Aをエグジット(出口戦略)と考えるベンチャーも増えており、戦略のかじ取りができるMBA人材にはやはり引きがある」(同)

次に職種別ランキングを見てみよう。6位の「コンサルタント・監査/税務/法律専門職」は、MBAでの学びと実務が近そうな印象だが、「経営層から職位が低い1コンサルタントに至るまであらゆる層でホルダーが多く、レア度が低い」(同)ため、差は200万円台にとどまった。ただ、この職種のMBAホルダーの平均年収自体は956万円と「金融・保険専門職」(1033万円)に次いで高い。

全体平均よりもMBAホルダーの方が300万円超高いという結果となった職種は「営業職」「企画・管理職」「機械・電気・電子エンジニア」「金融・保険専門職」。金融・保険はMBAホルダーが少なくない印象だが、「コンサルに比べれば希少性は高い」(同)こともあり、2位に食い込んだ。

そして1位は、「建設・土木・不動産・設備専門職」。理由は業種別ランキングについての指摘と同様「いま、この業界で経営がよりチャレンジングになり、活躍のフィールドが広がっているから」(同)だ。

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