米フィラデルフィアのチーズステーキが看板

一方、21年10月に東京・西麻布に開店したのは、「チーズステーキ東京」。こちらは米フィラデルフィア名物のサンドイッチ、チーズステーキ(正式にはフィリー・チーズステーキ、フィリーはフィラデルフィアの意味)を看板にした店だ。「ステーキ」という名前の通り、こちらもまさに「肉料理」のようなサンドイッチである。

東京・西麻布「チーズステーキ東京」の「フィリーチーズステーキ」。写真はレギュラーカット(1600円)

同店オーナーと共にメニュー作りに取り組んだシェフの橋本晋一さんは、以前、初めてフィラデルフィアを訪れた際に目にしたこのサンドイッチに魅了された。「なにしろ、サンドイッチ店だけでなく、ガソリンスタンドなど町のいたるところでこのチーズステーキを売っていた。牛肉のスライスとチーズ、タマネギをパンに挟んだものなのですが、シンプルなのにどの店で食べても味が違う。作る人によってみそ汁の味が違うのと一緒です。肉の部位も違えば、切り方も違って、それだけで食べたときの歯ごたえが変わった。チーズも、現地では匂いの強い『プロボロンチーズ』が好まれますが、日本のプロセスチーズのようなものも使う。すごく奥が深いんです」と言う。

動画投稿サイト「ユーチューブ」に、チーズステーキの動画が驚くほど投稿されていると聞き、橋本さんが好きだというフィラデルフィアの有名店の動画を見た。まずパンにトロトロのチーズを塗り、その上から細かく刻まれた薄切り肉とタマネギをどっかり盛る。最後に追いチーズをとろりとかけたら出来上がり(注文したチーズの種類などにより作り方は異なるよう)。コロナ禍前の画像で、店内は客で押し合いへし合いの大混雑だ。

「チーズステーキ東京」店内。西麻布を意識したお洒落な造り

「現地では基本的にホーギーロールという安いパンを使うんですが、これだけ食べたらおいしくないようなパン。だけど、肉の味を引き立ててくれるんです。パン自体がおいしすぎると、肉の味を殺してしまうんですね。日本では手に入らないので、具材の味を最大限に引き出すパンの選択には、最後の最後まで悩みました」と橋本さん。最終的に選んだのは、外がパリッとした、味のバランスがいいバゲットだ。

牛肉は肩ロースを使い、肉ならではの歯ごたえを出したいと、ひものように長い拍子木切り状にカットしてもらったものを使用。一緒に炒めるタマネギは甘みを最大限に引き出すため、調味料も工夫をする。チーズは、チェダーチーズとモッツァレラの2種類。「モッツァレラを使用したのはまろやかでクリーミーな味わいや、食べているときにチーズが伸びる楽しさを加えたかったから」と言う。ちなみに、サンドイッチのトッピングにはマッシュルームやハラペーニョなどがあるが、一番多いリクエストはチーズ増量だそうだ。

同店では肉々しい食感を出すため、肉のカットを工夫

客の年齢は幅広く、以前フィラデルフィアで働いていたという50、60代のファンも。やはり男性客が多く8割を占めるが、取材時に見かけたのは店から出てきたばかりの妙齢の女性客。テークアウトしたほかほかのチーズステーキに、道端でガブリとかぶりついていた。やはり一番おいしいのは、出来たてのサンドイッチ。テークアウトだけでなく、ぜひ店内で、心置きなくかぶりついてほしい。

(ライター メレンダ千春)

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