例えば、ある食品の情報をスマホで収集すると、ワーキングメモリが一時記憶・保存して脳の「ハードディスク」内の記憶と照らし合わせる。それによって「自分は血糖値が高め」という記憶とつながり、「おいしそうだが買うのはあきらめよう」と判断するわけだ。

ワーキングメモリの機能低下で物忘れ頻発

スマホを使えば、瞬時に新しい情報やニュースが次々入ってくる。さらにメールやチャットでの情報共有・交換も頻繁に行える。しかし枝川教授は「何気なくスマホをいじっているつもりが、実は脳には非常に負担をかけている」と指摘する。大量の情報が一気にやり取りされると、ワーキングメモリの容量が限られているため情報の一時保存・処理がしきれなくなるからだ。机の上に書類があふれ、整理できない状況と似ている。

その結果、ワーキングメモリの記憶機能が弱まり物覚えが悪くなったり、ど忘れしたり単純ミスが増えたりするという。コロナ下で物忘れが増えたと感じる人は、スマホなどデジタル端末を1日どの程度利用しているかチェックした方がいいかもしれない。

とはいってもスマホは今や必需品で、スマホなしの生活に戻ることは難しい。脳の疲れをとり機能を回復させるには、一般的に考えれば質の高い睡眠をとることが最も効果的。しかし、意識的に睡眠の質を担保するのは容易ではない。睡眠以外で、脳内の記憶装置を活性化したり強めたりする簡単な対処法はないのだろうか。

脳回復へ3つの対処法 まずはボッとする

枝川教授は3つの対処法を示している。まず1つは、ボーッとする時間を定期的につくることだという。ぼんやりしているときには脳の記憶が統合され、ひらめきのスイッチを入れる「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる情報編集機能が活性化するといわれる。この機能は自然に触れたり散歩をしたりしたとき、朝の体操や歯磨きなど習慣化された行動をとるときにも高まるという。

「天才にはひらめきがあるとよく言われるが、脳内でゼロから1を生んでいるわけではない」と枝川教授は話す。ぼんやりしているときに、脳内で複数の記憶を結び直して情報を編集するDMNが活性化して、ひらめきが起こるとみられているというのだ。

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