人生の転機をチャンスに ウーマン・オブ・ザ・イヤークラシコム・佐藤友子さん 竹下製菓・竹下真由さん

2022/12/27

女性誌「日経ウーマン」(日経BP)が選んだ「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2023」の受賞者2人は、人生の転機を思い切った決断力と行動力でチャンスに変え、事業に生かしてきた。

面白そうなことに素直に クラシコム取締役・佐藤友子さん

大賞に決まったのは、インテリア雑貨や衣料品などを取り扱う電子商取引(EC)サイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの取締役、佐藤友子さん(46)だ。

06年に兄と同社を創業。ECサイトの店長として商品やコンテンツを統括する。動画配信やSNS(交流サイト)など、多様なチャネルを通じてECの魅力や世界観を発信。ファンを増やし続けていることなどが評価された。

キャリアのスタートから、順風満帆だったわけではない。高校卒業後はアルバイトなどで職を転々とし、20代前半は兄や友人らとバンドを組んで活動。何事にも飛び込み挑戦する一方、何をやっても長続きせず、やりたいことが見つからない自分に悩んだ。

クラシコム取締役の佐藤友子さん

28歳で結婚した後、インテリア事務所に就職。インテリアコーディネートの仕事の傍ら、兄に誘われて不動産系の会社を創業した。だが「二兎(にと)を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるように「自分も何か1つに絞らなければ」と、焦っていた。

「人生なんて二兎でも三兎でも追っていい」。30代を迎える前、父が何気なくかけてくれた言葉に救われる。「欲張っても構わない。自分らしく人生を切り開くべきだ」と、気持ちを切り替えた。

30歳の時、夫の出張に同行し訪れたスウェーデンで、北欧の働き方やライフスタイルに感銘を受けたことが人生の転機となった。古い工場を改装したセンスのよいオフィス。人々は朝8時頃出勤し、午後5時には帰宅する。残業をする人はおらず、帰宅後は皆、キャンドルをともして家族と過ごしていた。

肩肘はらず自然体で「おしゃれ」に暮らす北欧の人々を目の当たりにし「同じ地球、同じ時代に生きているのに日本ではできていないことに悔しさを覚えた」。日本でも見習うことはできないか。北欧で感じた価値観をモノを通じて日本の顧客と共有したいと考えたという。

同じ年に今度は兄と北欧へ。当時日本でも流行していたビンテージ食器をECで販売する案を思いつく。クレジットカードの限度額まで食器を買い込み、日本で販売し始めた。これが「北欧、暮らしの道具店」の出発点となった。

次第にファンが増え、事業も軌道に乗ってきた。開店から11年目の18年に始めたのがオリジナルドラマ「青葉家のテーブル」だ。動画共有サイト「YouTube」で、ドラマを通じてECの魅力や世界観を発信する。ほかにも写真共有アプリ「インスタグラム」やインターネットラジオなど多様な手段でファンとのつながりを構築している。「単にモノを売りたいのではなく、心の交流のような場を提供したい」と力を込める。

創業時から自己資金のみで仕入れからサイト運営までを賄い事業を拡大してきた。8月には東証グロースへの上場も果たした。今後はリアルな交流の場や物販以外の事業にも手を広げていきたいとの構想を描く。佐藤さんは「面白そうなことに対しては素直に」をモットーに、これからも挑戦を続けていく。