サンリオピューロランド再建 小巻亜矢さんに大賞ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020

2019/11/29

女性のキャリアとライフスタイルを支援する月刊誌『日経WOMAN』(日経BP 東京・港、編集長:藤川明日香)は、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞者・小巻亜矢さん、特別賞・近藤麻理恵さんを含む、今年の受賞者8人を決定いたしました。

大賞に選ばれたサンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さん(60)は、来場者数が低迷し、赤字が続いていたテーマパーク「サンリオピューロランド」に着任し、2年で黒字化させるという“奇跡のV字回復”をけん引しました。その手法は、社内のコミュニケーションを見直すという“組織変革”。社員全員と面談するなど“人を育む”施策を重ね、全員が自発的に動く組織へと変革させました。主婦生活11年を経て仕事に復帰、その後、経験と学びとを重ね社長になった経歴も、女性がいくつになってもチャレンジできる時代の新しいロールモデルとして高く評価し、今年の大賞となりました。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020 総括

令和元年は、既存の枠組みにとらわれず、変化をつくりだす女性が活躍した年でした。

大賞受賞者は、経営不振に陥ったテーマパークをV字回復へと導いた経営者。従来の支配型リーダーシップでなく、対話を通じて組織を育てたリーダーシップは、成果の出ない組織を抱える、すべてのリーダーの手本となるものでした。ハンディキャップを抱えながら、素晴らしい作品を世に送り出したディレクター、ICT(情報通信技術)化の推進など、高齢化社会での新しい地方病院の在り方を示す病院理事長、働き方改革で後手に回るフリーランスの地位向上のために尽力する協会代表理事など、今年の受賞者たちは、当たり前とされてきた価値観を見直し、自ら変えていくことで、「働き方改革」「ダイバーシティー」「地方活性化」「災害対策」といった社会課題解決へのヒントを示しています。

受賞者全員が、性別の壁を越えてロールモデルとなり得る活躍を見せました。女性の活躍が日本を変える――。それを証明するような受賞者がそろいました。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020 受賞者

■大賞 

小巻 亜矢(こまき・あや)さん(60歳)

サンリオエンターテイメント 代表取締役社長

主婦から社長に! 現場の“働きがい”改革で
赤字体質のサンリオピューロランドをV字回復

低迷する業績、成果の上がらないチーム――。それを立て直すために必要なのは、最新技術や外部から招く優秀な人材、多額の投資だろうか。サンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さんが導いた答えは「NO」。社内のコミュニケーションを見直し、組織の変革を実施することで、今いる社員、今ある企業の資産で戦えることを証明して見せた。全社員と一対一で対話をし、モチベーションをアップさせアイデアを引き出すこと、世代や立場、部署が違う社員同士が対話する機会を設けること、社員からアルバイトスタッフへの積極的な声かけを徹底することなどの「人を育む組織変革」で、スタッフが積極的にアイデアを出して動く、強い組織を生み出した。審査員の早稲田大学ビジネススクール教授・入山章栄さんは、「組織のメンバーが最大限に力を発揮するための環境づくりにまい進する『サーバント・リーダーシップ』が、新しいリーダー像として注目を集めている。小巻さんの手法はその典型」と称賛する。

政府が「クールジャパン」を国家戦略とし、消費の流れが「モノ」から「コト=体験」に移行していること、アニメやコスプレを好きでいることが、世の中で受け入れられるようになっていること、SNSの普及で“カワイイ”が低コストで拡散されることに着目し、「ピューロランドは時代に合っている」と分析。ターゲットを子供だけでなく大人にまで広げる、フードや施設で“インスタ映え”を意識する、ショーとイベントの完成度を上げ、特別な体験を演出するという戦略で、集客力をアップさせることに成功した。

そんな小巻さん自身の人生は、想定外と苦難の連続だ。新卒で入社したサンリオを、25歳で退職し主婦になったが、34歳のときに次男を事故で失ったことで、人生が一転。「心にぽっかりと穴を抱えたまま」37歳で離婚し、その穴を埋めるように、主婦生活11年というブランクを経て、仕事復帰した。その後も、48歳で乳がんに罹患(りかん)し左乳房を切除し、寛解。50歳で、病気が原因で子宮を全摘出したが、「今まで以上に女性に寄り添えるようになった」と、女性を支援する団体を次々に立ち上げた。「今は、命のある限り、やりたいことを全うしたいと思っています」と話す。