大室 私たちが就職した頃って、30歳を超えたら転職しにくくなると言われていたんですけど、今は余裕でできますし。

塩野 「自分探し」の猶予期間が昔より延びているのは基本的にはいいことだと思います。子どもの頃からの趣味を続けていても、それはそれですてきですね、という世の中になったので。ただ、そうすると大室さんが仰るように、「句読点」がない世界になります。だから、人からは句読点がもらえない。

大室 色々な会社を見てきて、やりたいことを主張して組織に盾突く人はやはり「青臭い」とか言われるわけです。青臭い議論ができなくて処世術だけうまくなって安全運転の大人になることが果たしていいかわからないですけど。そんなつまんない大人になるなってカッコ良く言いたいところですが、産業医からしてみると、ぶつかりまくる人の方が明らかにメンタル不調のリスクが高い。だから好きなことで突き進めと、安易には薦められないんですよね。

身軽に転身するフィンランド

塩野 なるほど。いいかげんなコンサルタントの提言としては、これだけテクノロジーがあるんだったら、「やるところまでやればいいじゃん。で、どこかで諦めなよ」って思います。自分で決めさえすればいい世界だと。

例えば私が以前住んでいたフィンランドって、年配の方でも普通に起業するんですよね。学校が全部無料なので、子どもの教育費問題もなくて、起業のハードルにならない。例えばレストランで働いていた人が、専門学校に通って、ソフトウエアエンジニアになるということが可能です。無料で様々なコースがあるので、「こんなこと学べるコースないですか?」って相談までできる世界がある。「手に職」みたいな地に足の付いた世界においては、食べるためにどんどん時流に合った職業に就いていくというのは、結構よくて。

経営共創基盤・共同経営者の塩野誠さん(写真左)。ゴールドマン・サックス、ベンチャー起業、べイン、ライブドアなどを経て現職。大企業のコンサルティングや北欧・バルト地域でベンチャー投資を行い、フィンランド在住経験がある。著書に『20代のための「キャリア」と「仕事」入門』(講談社)『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)など。

大室 今の日本って過渡期だと思うんですよね。「30歳にもなって何やってんだよ」といった抑圧からは逃れたものの、フィンランドほどには個人主義みたいな感じではなくて。だから40歳ぐらいにはひとかどの人物になっていなきゃいけない焦りみたいなところがある。おそらく成熟した欧州国家は、社会的に何者かじゃなくても自分らしく生きている人間に対して周囲が称賛、とまではいかなくとも承認はしてくれると思うんですよね。

次のページ
「練習しすぎたらあかんで」と島田紳助さんが言った理由