唯一の解決方法は特許権放棄

佐藤 根本的な解決策は、やはり特許権の放棄しかありませんか。

ユヌス それが唯一の解決法です。ワクチンの開発企業も開発国の政府も、永久に特許権を放棄すべきです。反対している一部の国は、世界貿易機関(WTO)で定められているルールにのっとって申請すべきだと主張していますが、これには膨大な時間がかかります。

新型コロナウイルスの感染拡大は世界全体にとっての緊急事態です。ワクチンの知的財産権は無料で共有すべきです。一部の企業、一部の政府の利益のために、障壁を設けてはいけないのです。

今必要なのは、プロダクション、プロダクション、プロダクションです。ワクチンが不足している限り、先進国は自国のためのワクチン確保を優先し、COVAXへの供給はあとまわしとなるでしょう。日本も自国に十分なワクチンがあれば、もっと他の国のことを思いやる余裕がでてくるのではないですか。

110億回分以上のワクチンが手元にあってはじめて、さあ、これをどのように分けようか、という話になります。世界にあり余るほどのワクチンがあれば、COVAXの枠組みも意義あるものとなるでしょう。

新型コロナウイルスは世界共通の敵です。世界中の力を結集して、この戦いに勝たなくてはなりません。そのためには全体最適の視点から、世界のすべての人々がワクチンを接種できるようなワクチンの生産計画、配布計画を立案する必要があります。世界は「誰一人取り残さないワクチン接種」を実現すべきなのです。

ムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)
バングラデシュの経済学者・銀行家・社会起業家。九州大学高等研究院栄誉教授。1940年バングラデシュ・チッタゴン生まれ。60年ダッカ大学卒業。70年米ヴァンダービルト大学にて博士号取得。72年に帰国後、チッタゴン大学経済学部長を務める。83年、グラミン銀行創設。マイクロクレジット(無担保少額融資)を通じて、世界の貧困問題の解決に貢献。2006年、グラミン銀行とともにノーベル平和賞受賞。マグサイサイ賞、米大統領自由勲章、米議会名誉黄金勲章など受賞・受勲多数。21年7月には「オリンピック月桂冠」を授与され、話題を集めた。主著に『ムハマド・ユヌス自伝』『貧困のない世界を創る』、近著に『3つのゼロの世界――貧困0・失業0・CO2排出0の新たな経済』(早川書房)。
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