「ドライブ・マイ・カー」の主人公では黒ずくめ
ちなみにこのポスターで岡田将生氏が着ているスエードのシングルライダースジャケットは、特徴的なファスナーポケットから通称「八の字」と呼ばれている『メゾンマルジェラ』だろう。また三浦透子氏が演じるドライバーのみさきの、いつもキャップを浅くかぶって古着のような男物のツイードジャケットをオーバーサイズでブカブカに着て、中にはオンブレチェックのシャツを合わせ、太めのジーンズに黒のコンバースという、いなたいアメカジスタイルも実に格好いい。映画のクレジットを見たら『トゥモローランド』と『フリークスストア』が確認できたので、おそらく2人の衣装に協力しているのだろう。

某映画評論によれば、『ドライブ・マイ・カー』で主人公が黒ずくめの格好をしているのは、小津安二郎が作品の中で赤色を効果的に使っている演出法と同じで、ストーリーのキーになる赤いサーブを強調するための演出の一つだと述べている。確かにそうかもしれない。でもファッション的に見たら、いつも黒を基調とした上質なカジュアルセットアップで、仕事は売れっ子の舞台俳優にして演出家、美しい奥さん(霧島れいか)がいて、おしゃれな高級マンション住まいで愛車は赤いサーブ。家福は最強のフリーランス(自由業)の鑑(かがみ)にして理想のノームコアスタイルである。いいなぁ、同じフリーランスのモノ書きとして憧れちゃう。

1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN’S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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