清湯スープとモッチリ自家製麺を巧みにコラボさせた「ひなり竜王」の「塩らーめん」

『ひなり竜王』が現在、提供中の麺メニューは「醤油(しょうゆ)らーめん」、「塩らーめん」、「つけめん(醤油)」、「つけめん(塩)」の4種類。(近日中に「まぜそば」も提供予定。現在、鋭意開発中)

中でもおススメしたいのが、「醤油らーめん」と「塩らーめん」。清湯スープとモッチリ自家製麺とを巧みにコラボさせた、今期を象徴する手打ち式淡麗ラーメンの1杯だ。

丼が卓上に供されると、まず目を引くのが、存在感のある豪勢なトッピング。丼の中央部に、調理技術の粋を尽くして創り上げられた大判の『岩中ポーク』の低温調理チャーシュー、厚みのある『信玄鶏』のモモ肉が、海面からせり出した巨岩のごとく鎮座する。

これらの肉塊の頂上部には、ネギ、細切りメンマなどが品良く盛り付けられ、色彩的、視覚的に花を添える。「醤油」には「刻み青ネギ」、「塩」には「白髪ネギ」と「三つ葉」を配するなど、メニューによって合わせる薬味を変えるこだわりも、実に心憎い。

「ひなり竜王」の醤油らーめん。スープをすすると、味わい深いうま味が染みわたる

レンゲでスープをひと口すすれば、味わい深いうま味が、まるで体液のように身体中に染みわたり、食べ手を魅了する。出汁(ダシ)は、『岩中ポーク』、『信玄鶏』に加えて、真昆布、椎茸、香味野菜等を、素材の持ち味が最大限発揮されるさじ加減を、緻密に計算しながら炊き上げている。

出汁に合わせるタレ(カエシ)にも、妥協は一切ない。「醤油ダレ」は、数種類の生揚げ醤油をブレンドし、香り豊かなアサリ出汁を溶け込ませることで、力強く奥行きのある味わいを実現。

一方、「塩ダレ」は沖縄の「シママース」、「雪塩」に、香味野菜のナチュラルな甘みを過不足なく添えることで、素材感が際立つ、穏やかで余韻のある味わいのスープに仕上げている。

このスープに合わせるのは、小麦の種類・配合から、加水率・厚み・太さに至るまで、試行錯誤を重ねて創り上げた自家製麺。滑らかでモッチリとした触感から、すすり心地の快適さ、食感のみずみずしさに至るまで、随所に研さんの跡が垣間見える、非の打ちどころのない逸品。北海道産小麦を100%用いた中華麺用の粉である『和華』をメインに紡ぎ出した手打ち式の麺は、適量のスープを確実に口元へと運び込み、食べ手を恍惚(こうこつ)の境地へと誘う。

「醤油」「塩」。そのいずれもが、開業したばかりの新店とは思えぬほどのクオリティーの高さを誇る傑作である。ぜひ一度、足を運んでみてもらいたい。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。