2022/2/18

ファッションの「ジェンダーレス化」 日本が先行

――むしろ日本人の方がメンズジュエリーに親しんでいるのですね。

「アジアの文化では男性と女性の間でファッションのすみ分けの重要性が低いのです。非常に流動的で、メンズとウィメンズがミックスしています。とりわけ日本でその傾向が強いと感じています。非常に興味深いことに、ジェンダーレス文化の波は欧州にも押し寄せてきていますが、圧倒的にアジアが先行しており、男女のテイストの境界線が薄いと思います」

「若い世代に関してはこの10年ほどで、個性を主張したがるようになりました。行動、スタイリング、選ぶモノ、すべてで以前よりも主張が強くなったと感じます。これまでは社会的影響を受けて何かの模倣をすることが多かったのですが、いまの若者は自分の個性やセンスを大事にする。個性を表現するアイテムの一つがジュエリーなのです」

英国の哀悼の指輪 ともに18世紀末から19世紀初頭のもの。透かし細工を施したゴールド製(左)と遺髪が収められたシルバー製
ヴェネツィア元首の指輪 権力を象徴する指輪。台座には蜜蠟を入れる空洞があり、蜜蠟を溶かして指輪で刻印し、手紙を封じた。シルバー、カーネリアン 19世紀

――VCAのジュエリーでもその傾向はありますか。

「VCAはそれほどメンズが強くありませんが、レディースの既存のコレクションでメンズをひき付けていきたい。マジック アルハンブラ(四つ葉のクローバーに着想したモチーフ)のロングペンダントを着けている男性を見ましたがとてもよく似合い、女性ものには見えませんでしたよ」

――そのアルハンブラにけん引され、VCAのジュエリーが新品・中古ともに売れています。これだけVCAがクローズアップされているのはなぜでしょうか。コロナ禍の時計・宝飾品の好調ぶりをどう分析していますか。

「2021年は過去最高の売り上げで、前年に比べて2桁増となりました。10年ほど前からよいトレンドの波がきていたのですが、20年から加速していると実感しています。東京や大阪に開店した旗艦店、京都でのエキシビションなどにしっかり投資して、メゾンのアイデンティティーをお客様に伝え、露出を増やしたのが理由でしょう」

「コロナショックに見舞われて旅行や食事に行けない消費者が、ラグジュアリーブランドを購入するようになっています。消費のトレンドがコトからモノに戻りつつあるようです。VCAはその波に乗ることができました」

聖職者の指輪 1920年から30年ごろに作られたもの。中央のアメジストをダイヤモンドが囲む
オルゴールの指輪 オルゴールが組み込まれている。花のモチーフでカムフラージュされた歯車を回すと音が鳴る仕掛け。ゴールド、シルバー 19世紀

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