
毎年恒例の新語・流行語大賞だが、先日2022年のノミネートが発表された。そのなかに「ヌン活」なる謎の言葉を発見して頭の中をハテナマークでいっぱいにされた方も多いだろう。これ、「ホテルなどでアフタヌーンティーを楽しむ活動のこと」だという。
コロナ禍でアフタヌーンティーが静かなブーム
感染症による制限や不安が昨年よりはやわらぎながらも、宿泊の回復は遅れぎみ。一方、酒類を強調するキャンペーンもなかなか打ち出しにくい。そんな状況のなか、通常は客が多くない午後の時間に軽食やスイーツとともに紅茶を楽しむプランを提案したと考えられる。確かに、今年、アフタヌーンティーを積極的に売り出したホテルは多かった。そして、ホテル以外のレストランや紅茶専門店も積極的にアフタヌーンティーを売り出した。
9月にはエリザベス女王の逝去という悲しい出来事もあったが、それは同時に、在りし日の故人の逸話とともに、英国の優雅な習慣が改めて関心を集めることでもあった。
ホテル、レストラン、紅茶専門店のヌン活プランの提案はまだまだ続いており、12月もクリスマスをテーマとしたアフタヌーンティーの提案に力を入れているところが多い。
さて、そのアフタヌーンティーで楽しむ紅茶については、昨今「和紅茶」なる言葉もよく聞くようになった。これは「日本産の紅茶」のことだが、「いや、日本産の茶は日本茶で、日本茶とは緑茶ではないか」と思う向きも多いだろう。しかし、実は日本はもともと紅茶輸出国であったのだ。静岡県はじめ茶産地では有名なこの事情を、ひもといてみたい。

まず、そもそも日本で紅茶は作れるのかということから。
茶には、日本茶として飲まれている緑茶のほか、紅茶、烏龍(ウーロン)茶などさまざまな種類があるが、基本的に、これらの原料はいずれも「カメリアシネンシス」という学名のツバキ科のチャノキという植物の葉(茎を使うものもある)である。その茶葉は自分を酸化する酵素を含んでおり、摘み取った茶葉は刻々と酸化していき、茶葉は緑色から褐色へ、褐色から黒へと変化していく。十分に酸化して黒くなったものが紅茶(英語ではblack tea)だ。烏龍茶は、途中で酸化を止めて作る。摘み取ってすぐに加熱して酵素が働かないようにして緑色を保ったものが緑茶だ。
なお、茶葉が酸化するプロセスを「発酵」という。酒ができるアルコール発酵や漬物ができる乳酸発酵は微生物の働きによるものであるのに対して、茶の発酵はそれらとは全く異なるものだが、慣例的にそいう呼んでいる(酸化とは別に、こうじ菌による発酵で作るプーアル茶、乳酸菌による発酵で作る阿波晩茶などもあるが、これらは後発酵茶という)。