武器は3つしかない

本書では武器のことを競争優位と表現しており、それは3つしかないと述べている。

1. 安い原材料をあなただけが使え、安く製品・サービスを提供できるか?(安く作る)
2. 顧客が他ではなくあなたの製品・サービスを買う習慣があるか?(顧客を囲う)
3. 設備投資など固定費をみんなが払わなくてはいけない中、あなただけ生産規模が大きく、固定費の比率を下げられるか?(規模の経済を働かせる)

この3つだ。本書にある事例で分かりやすいのはコカ・コーラ社の例だ。コカ・コーラ社の武器は2と3の組み合わせである。若い時にコカ・コーラを飲むと何度もコカ・コーラを買う。そのおかげでシェアが安定し生産規模が大きいので、広告宣伝費などの固定費が売価に占める比率が小さくて済み、規模の経済が効くのだ。誰かが新規にコカ・コーラ社に対抗しようとしても、この組み合わせには勝てない。あえて対抗できるとしたらペプシ社なので、コカ・コーラ社は競争優位を守るためにうまいことペプシ社と協調しなくてはならない。

もし自社にこうした競争優位がなければ、今の業務を他社より無駄なく実行できるように、業務の効率を上げるべきだというのが本書の主張だ。効率を上げ続けていれば、競合と同じ活動をより高い費用対効果で行うことができる。

筆者の解釈では、本書を読んだ上で自社の武器を見つけるためにあなたが調べることは、

A) 売上原価率は他社より高いか低いか?
B) 顧客のリピート率は他社より高いか低いか?
C) 固定費比率は他社より高いか低いか?

の3つとそれらの理由だ。調べるのが難しい場合はまず、シェアと投資対利益率の推移を見ればよい。武器を持っている会社が多い業界であれば、プレーヤーの数は変わらず、シェアに大きな変化がないはずで、投資対利益率も高い水準でとどまっているはずだ。そこを確認してから、上記のABCを調べるのも手だ。

次の課題は「武器の磨き方を伝えてあげること」

武器を見つけた段階で社長は安心しがちだが、残念ながらそれではいけない。見つけた武器を磨くために、役員以下を巻き込む必要がある。戦略は、伝え方が大事なのだ。

筆者がたまに見る例は、「全世代に展開! 特定世代に集中!」といった矛盾する両論を併記した戦略を作る企業だ。別々の部門の意向をホチキス止めした結果だ。これを受け取った商品開発部門は、誰のために何を作っていいかがわからないはずだ。

こうしたケースは社長の伝え方が悪いことが原因の場合がある。例えば社長が、リピート率を上げるために顧客の世代ごとに製品を変えるという戦略を考えていたとしよう。だがそれを「お客様の要望に応え続ける」という表現で役員以下に伝えていたりするのだ。別に何をやっても顧客の要望に応えることになり得るので、「全世代に展開! 特定世代に集中!」が違う部署で同時に計画されてもおかしくない。

戦略を具体に落とす重要性を理解するのに、リチャード・P・ルメルト著『良い戦略、悪い戦略』(村井章子訳、日本経済新聞出版)をお勧めしたい。

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