できる男・井之頭五郎 「普通」のスーツスタイル

ドラマの中での松重豊氏は、いつもネイビーかグレイのシングル三つボタンのスーツスタイル。シャツは白のレギュラーカラーで、タイもシンプルなドット柄やネイビーやエンジのソリッドタイをプレーンノットで締めている。靴は黒のプレーントゥかキャップトゥ。それも何十万円もする高級な英国製のどこそこの革靴などではなく、至極まっとうな普通のビジネスシューズ。だからといって、よくいる捨て寸(靴とつま先の間の空間部分)が反り返ったトンガリシューズでは決してない。ベルトも靴に合わせた黒のシンプルな四角いシルバーバックルのレザーベルト。腕時計も見やすい文字盤のシンプルなメタルバンドのもの。かばんも今どきのビジネスマンが持つビジネストートや3ウエーバッグではなくマチが深いレザーのブリーフケース。

派手ではないが訪問先のクライアントに不快感を与えない、まさに仕事ができるビジネスマンのお手本のようなスーツスタイルである。ちなみにドラマで衣装提供しているのは、イラストレーターの綿谷寛氏の広告イラストでおなじみの『麻布テーラー』だ。

とはいえ、そこはやっぱり井之頭五郎。食べたりなくて追加でメニューをオーダーして、ご飯とおかずを食べ進める配分を考えながら、ラストスパートをかける時は「うおォン、俺はまるで人間火力発電所だ」という心の声と共に、ジャケットも脱いでタイも緩めてシャツも腕まくりして本気を出すのだ。

ああ、なんだかこんな原稿を書いていたら腹が……減ってきた。そうだ店を探そう。うん、そうそうこれこれ、こういうスーツでいいんだよ、こういうので。

いで あつし
1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN’S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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