
ファッションジャーナリストでもないので毎回いつも熱心に見ているわけではないが、いやぁー、2022-23秋冬のパリ・メンズコレクションはなかなかに見応えがあった。コロナ禍で今回もリアルなショーとデジタル動画の混在で開催されたのだが、特に日本勢のブランドのショーは、コロナ禍の国内での開催2年目ともなるとデザイナーのみなさんもふっきれたというか、いつにもましてぶっとんでいて面白かった。
黒ずくめの迫力 プロのモデルもタジタジ
例えば『メゾンミハラヤスヒロ』は、靴からスタートしたブランドらしく日本の靴の生産拠点の浅草に敬意を表して、浅草の商店街をランウエーにしてコレクションが発表された。
ショーの最中にパトカーが赤色灯を点滅させながら駆けつけてギャラリーは騒然とするが、中から出てきたのは警官にふんしたデザイナーの三原康裕氏。警官姿でモデルと一緒に踊ったりギャラリーをランウエーに引っ張り出したり、会場になった浅草の商店街は大盛り上がり。ファッションショーはやる方も見る方も楽しまなきゃという面白いショーであった。
東京で開催されたパリコレメンズのショーでも話題になったのが、ご存じ、日本を代表する大御所デザイナー、山本耀司氏の『ヨウジヤマモト』のショーである。
今回のヨウジヤマモトのコレクションのテーマは、写真機が登場した19世紀初頭に撮影された男たちの姿。ランウエーにはモデルたちに交じって、コートの背中に「もうガマンしなくていいんです。」などとメッセージが入ったヨウジヤマモトの最新コレクションを着こなした、俳優の仲村トオル氏、伊原剛志氏、加藤雅也氏といった強面(こわもて)のイケてるオヤジたち、“イケオジ”が登場した。
中でも会場のギャラリーの注目をかっさらったイケオジが、松重豊氏である。モデルばりの長身で、全身黒ずくめのロングコートにジャケットにストールにシャツにパンツにブーツという最新のヨウジヤマモトのコレクションを着こなして、ギラリッと会場のギャラリーを睨(にら)みつけながら、ランウエーをゆっくりと静かに歩く松重豊氏。スッと振り返ったコートの背中には「老虎残夢」という漢字四文字で描かれたメッセージ。いつもは穏やかなジージに見える最近の松重氏のトレードマークのグレイヘアも黒ずくめの服に映えて不気味ですらある。いやはやその圧倒的な存在感たるや、プロのモデルたちもタジタジだ。



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