その瞬間は突然に、退職を決意した「上司のひと言」

日経クロステック

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キャリアアップや人間関係構築、給与などの待遇面、転職や起業――。技術者の多くは、自分の働き方について様々な悩みや不安を抱えています。人事コンサルタントとして様々な企業の職場活性化を支援する天笠淳さんが、こうした不安を解消し、働く楽しみを見いだすための具体的な方法を紹介します。

また同期が1人転職する。自分もそろそろ転職したほうがよいのか、それとも今の会社にとどまるべきなのか――。

転職をぼんやりと考えつつも、気持ちの踏ん切りがつかないという人にこれまで多く会ってきました。こうした人から、10回の転職経験を持つ筆者は「どうやって転職を決断したのか」と尋ねられることがあります。

筆者はこれまで、さまざまな規模や業種の会社で働いてきました。その中には、スタートアップや経営再建中の会社もありました。非常識的な業務フローや労働条件をはじめ、驚くような事態に直面した経験はいくつもあります。しかしそれらは会社を辞める原因にはなっていません。

筆者の場合、「いつ辞めようか」と非常識な状況に我慢を重ねて退職に至ったことはほとんどありません。多くの場合、「もうこの職場とはサヨナラしよう」と思う瞬間は突然やってきました。それは「自分がどうしても受け入れられない価値観に触れたとき」です。

筆者にとってどうしても受け入れられない価値観はごく少ないのですが、いざ出合うと許容できません。それまで自分が一生懸命働いてきたことも「無駄だった」と感じてしまい、その場所で働き続ける意味を見いだせなくなります。

上司のひと言で退職を決意した

一例をご紹介しましょう。ある人材系のコンサルティング会社で働いていた30代の頃のことです。

Excelを使った作業で手間取っていたとき、上司がその様子を見て「天笠さんはLD(学習障害)なの?」と真顔で尋ねてきました。

人材に関する仕事をする人が、他人の動作を少し目にしただけでそのような発言をしたことに強い憤りを感じました。当人が実際にLDの特性を持っているかどうかにかかわらず、こんな発言を安易にすべきではありません。筆者の場合、義憤や正義感に駆られたというより、言葉にできない強い違和感を覚えました。

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「自分が受け入れられないものは何か」を考える