成長意欲の高い人材に絞ってOJT

職場の上司・先輩が後輩に対し、実際の仕事を通じて指導し、知識や技術を習得させるOJT(職場内訓練)はかつて日本企業の人材育成の核でしたが、最近はホワイトカラーを中心にその機会が減っています。今後は環境変化のスピードがこれまで以上に速くなることが予想されます。これまでの画一的な人材育成から成長意欲の高い人材に絞ってOJTを提供し、真のタレントの育成に努めることが必要です(図3)。

実施にあたってはまず、能力向上意識の高い人材であるトレーニー(育成を受ける社員)の見極め・選定を行います。これは職場の管理監督者に確認して選出することもできますが、働きがいに関するアンケート調査を実施し、その結果から意識の高い人材の母集団を形成する方法が効率的です。

次に、対象者ごとにこれまでの業務経歴・人事考課結果を通じて長所や成長に向けた課題などを確認し、向上させるべき仕事能力を特定するのがよいでしょう。個人ごとに成長課題を特定したら、現場の管理監督者と配置に関する調整を行います。部門をまたぐ異動も考えられるため、人事部門と連携しながら進めるとよいと思います。

そして、ここからOJTの実践に移ります。トレーニーが配属される前に、指導・評価を行う管理監督者に新しいOJTの趣旨と期待役割を伝えておき、トレーニー配属後のオリエンテーションで管理監督者は仕事のミッションやオペレーションを説明し、仕事の心構えややり方についてアドバイスします。新しい業務を行う前の助言はトレーニーにとって貴重な情報であり、仕事の向き合い方を高めます。

その後の業務体験中の指導・フィードバックはOJTの核になります。フィードバックでは事実に基づき、良い点と成長のための課題をセットで伝えます。ポイントは良い点も改善点も気づいたことはその場で端的に伝え、双方で話し合うことです。

最後の振り返りと評価ではこれまで伝えたフィードバック内容を確認し、改善できたかどうかを話し合い、管理監督者はこの期間で得られた成長についてトレーニーからフィードバックを受けます。このように計画的に育成された人材は多様な部門で業務を手がける機会を通じ、組織内共通の認識基盤が自然と形成され、情報の交換や共有によって組織内のすり合わせがやりやすくなり、コミュニケーションスキルの向上に伴い収入もおのずと上がっていくと考えられます。

また、管理監督者はトレーニーの仕事に対する習熟度に合わせてティーチング(教える)とコーチング(傾聴してヒントを与えて気づかせる)を使い分けるテクニックや、トレーニーが素直に耳を傾けてくれる伝え方の技法を学んでおくと効果的です。

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