転職の度に大失恋 恋愛支援で起業した元電通社員の話

スローな恋愛を演出する女性起業家、森本さん

コロナ禍でもロマンチックな出会いがほしい――。恋愛マッチングアプリが身近な20~30代の間で話題になっている新しい恋愛支援サービスがある。同じ本を読んだ人と出会えるオンライン書店「チャプターズ」だ。運営社のミッションロマンチック(東京・港)代表取締役の森本萌乃さん(31)の経歴は、新卒で電通、外資企業を経て、副業しながらスタートアップで働き、そして起業という、キラキラ系キャリアだ。しかし森本さんはもともと起業を目指していたわけではなく、「キャリア迷子」と自称する。ロマンチックでも逆転劇でもない、等身大のキャリアストーリーを聞いた。

オンライン書店「チャプターズ」は、“スロー”な出会い方が特徴だ。月額1980円のサービスに登録すると、毎月4冊の書籍リストが提示され、その中で選んだ一冊が自宅に届く。読了した頃に同じ本を選んだ人とビデオチャットで会話して、お互いまた会いたいと思えば、連絡先を交換するという流れだ。追加チケットを買わない限りは、出会うのは基本的に月に1人。話すまではお互いの顔はわからず、年代など最低限のプロフィールしか開示されない。

効率的に出会える恋愛マッチングアプリとは真逆の戦略が見事に当たり、21年6月のグランドオープンから約半年で、累計利用者数は2000人を超えた。9月には出版取次大手のトーハンや複数の個人投資家から、1000万円超の資金調達も発表している。

借金1千万円

ここまで聞くと、成功した人の話に聞こえるかもしれない。しかし、森本さんは今もまだ自分に給料を払えておらず、サービス開始時に金融機関から借り入れた約1千万円の借金を背負っている。会社の運営資金も夏はショート寸前だった。

「起業がかっこいいなんて全然思いません。スタートアップってキラキラした話が多いですけど、私は全然うまくいってないし、ずっと苦しい。キャリアで言うと、2回転職してますが、どちらも“大失恋”ですし」

そう明かす森本さんのキャリアのスタートは、順風満帆の勝ち組だった。

建築やインテリア関係の仕事をしていた両親の影響もあり、芸術や舞台が好きだった森本さんは中央大学法学部時代、劇作家を目指してロンドン大学ゴールド・スミスカレッジに留学。鬼才天才を目の当たりにして作家の道こそ難しいと断念したものの、ミュージカルや演劇のレビューが上手だと評価され、伝えることが得意だと気付く。帰国後は就職活動で広告代理店を受け、第1志望の電通に就職した。しかも配属は希望通りのプロモーション事業局。全国を回る大型イベントや影響力の大きな仕事も多く、充実していた。

しかし仕事の規模が大きくなるにつれ、違和感を覚えるようになる。憧れの会社に入ったはずが、心躍らないのだ。

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運命の会社だと思ったのに