おそらく皆さんが学知を実装しようと取り組み始める際には、同様に学知の有用性を共有できずに苦労する場面もあるかもしれません。しかし今後、さまざまなビジネスで、リスクに対する説明責任や各指標の根拠などの開示が、ますます重要になってくるでしょう。

例えば不動産売買なら、不動産の担保処分による売却での売却価格の利害関係者への妥当性の説明など、これからもっとシビアに考えなければいけなくなるでしょう。そして私自身は、そのために求められる具体的な行動も見えてきています。それは、「経済学」を身近に触れてきたから、そして経済学者のパートナーと議論してきたからです。

今はまだ、公共性の高い民間サービスでも「経済学」を実装しようとする流れは大きくありません。今後、いかに公正・信頼を高めていくかを検討することがサービスの成長、そして存続に直結していくと考えています。

実際、信頼を担保するための「学知」の活用は、少しずつ広がり始めています。例えば、「メルカリ」では「転売ヤー」問題をはじめとする第三者委員会メンバーに経済学者を多数登用しました。

あるいはレーティングサービスでも、訴訟を起こされた「食べログ」のように、さまざまな課題が明らかとなってきています。私自身も多数のレーティングサービスの設計に関与しているからこそ、学知の実装の必要性を強く実感しています。マネタイズに直結しにくいからといって、説明責任や頑健性をはじめとする信頼性を後回しにしても何とかなる時代は、もう終わったのです。

経済学の実装で社会発展に貢献したい

自分自身の原体験が、エコノミクスデザイン創業、オンラインスクールの運営、『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』(日経BP)の出版につながっています。

まずは、経済学に触れ、学知がビジネスの役に立つということを知ってください。知らなければ、絶対に活用できません。専門性の高い学びである必要はありません。広く浅く学ぶことで、複雑なビジネス課題の輪郭が少しずつ見えてきます。まずは、輪郭を知るだけでも研究者との議論ができるようになります。ビジネス課題の輪郭を浮かび上がらせ、共有できればみんなで解決策を考える体制を作ることができる。リカレント教育として、経済学はもってこいの学問だと思います。実体験がある私としては、「すべての企業で学知が役に立ちます。さまざまなビジネスシーンで、その場面に適した学知はあります」と心からお伝えしたい。そして学問とビジネスが両輪となって発展していく未来を目指し、「経済学のビジネス活用」に突き進んでいきたいと思っています。次回からお伝えする学知のさまざまな活用事例が、皆さんの学知のビジネス実用のきっかけになればと願っています。

今井誠
エコノミクスデザイン代表取締役・共同創業者。1998年関西学院大学商学部卒業。金融機関を経てアイディーユー(現 日本アセットマーケティング)にて不動産オークションに黎明期から従事。その後、不動産ファンドを経て独立。2018年ディアブル代表取締役、デューデリ&ディール取締役に就任し、不動産オークションでの経済学実装に取り組む。さらなる経済学のビジネス実装に挑むべく、エコノミクスデザインを創業。