変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

米国の連邦最高裁は6月、人工妊娠中絶を認めない判決を出した。中絶を合憲とした1973年の「ロー対ウェード判決」を覆した。これにより多くの州が中絶を禁止あるいは著しく制限する法律を制定した。レイプや近親相姦による妊娠や母親の生命に関わる場合以外は中絶を認めないという内容がほとんどだ。

50年近く認められてきた権利が覆された影響は計り知れない。レイプや生命の危険は証明が難しく、レイプで妊娠した10代の少女が出産を強制される、がん患者の妊婦が抗がん剤治療に必要な中絶を受けられないといった深刻な事態も生じている。胎児の生命を尊重し、中絶を殺人とみなす立場の人は最高裁を支持するが、女性の命や人生はどうなってもいいのだろうか。

妊娠は男性がいなければ成り立たないが、望まない妊娠のリスクを負わされるのは第一に女性だ。日本でも課題は山積している。

日本で中絶は可能だが、刑法の上では堕胎罪はいまだに残っている。国内で主な避妊法であるコンドームは、使用を男性に頼るしかない。低用量ピルや子宮内避妊器具など、女性が主体的に使え、避妊効果もより高い方法は残念ながらあまり普及していない。

世界の多様な避妊法のうち、日本で未承認、または入手が難しいものも多い。例えば、妊娠の可能性がある性行為から72時間以内の服用で、妊娠の確率を著しく下げる緊急避妊薬は、医師の処方箋が必要なうえ高額だ。厚生労働省の調査では、世界約90の国・地域で処方箋なしに薬局で低価格で買える。欧米では学校や病院で無料提供する国もある。妊娠を心配する日本の多くの女性にとって、72時間以内に処方箋入手という条件は、心理的にも物理的にもハードルが高い。

写真はイメージ=PIXTA

写真はイメージ=PIXTA

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック