「物語を買う」のも楽しみ

――そうですね、人とかぶらないですし、安くて個性が出せる。赤×黒のバッファローチェックのハンティングシャツなんてほとんど変わらず今もありますよね。

安藤「このバッファローチェックシャツは10年前くらいに手に入れた、ウールリッチのもの。高校生の時にものすごくはやりました。当時はヘビーデューティー全盛で雑誌『ポパイ』に取り上げられて、L.L.ビーンのビーンブーツと合わせて着るのが流行していましたけど、その時は手を出さなかったんです」

石津「もともとは狩りをする人が森の中で獲物と間違われないように着たシャツですよね。こういうテイストの服って、しばらくしてまた着たい気分が巡ってくるもの。スポーツウエアやアメカジものって変わらないから、安く古着で手に入れるのが賢いよね」

安藤さんが着ているのがウールリッチのバッファローチェックのシャツ。赤×黒は定番だ

――安藤さんはどんな店で古着を買うのですか。

安藤「高円寺とか下北沢とか原宿とか、古着屋が密集しているところも行きますが、面白いのは地方の古着店。子供のテニスの試合に同行して高崎とか山梨だとかに行って、時間が空いたときに、古着のチェーン店に行ってみるとたまに掘り出し物があります。それが楽しいです」

石津「おそらく、骨董品好きが骨董品屋巡りをしている感覚。骨董屋に行くときは何かを狙っては行かない。そうして偶然の出合いがある。本来アウトドアウエアやスポーツウエアというのは、本人がアウトドアや競技ができないと意味がない。スキー場に行く、テニスをするといった目的のために着た服なんだけど、今は物語を買う。ビンテージウエアに詰まった物語を味わうというのも、古着の楽しみだろうね」

「ビンテージウエアに詰まった物語を味わうというのも、古着の楽しみだろうね」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

石津祥介
服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。

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