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宮大工 小川三夫氏

宮大工 小川三夫氏

奈良の薬師寺など名だたる寺の再建工事に携わってきた宮大工の小川三夫氏(75)。1977年に寺社建築会社の鵤(いかるが)工舎(栃木県塩谷町)を立ち上げ、多くの弟子が宮大工として第一線で活躍している。自身も棟梁として現場を率いてきた。「弟子は育てるのではなく、育つ環境をつくることが肝要」と話す。

――21歳の時に法隆寺の宮大工だった西岡常一棟梁に弟子入りしました。宮大工を志したきっかけは何でしたか。

「高校の修学旅行で法隆寺を見た時の驚きが原点です。今のような大工道具がない飛鳥時代にどうやって材料を運び、組み立てたのか。体一つであれだけの仕事をした根性に感服しました。どうやって造ったのかはいまでも思いつきません。大変な知恵を働かせたはずです。工夫しなかったらできません。これができれば他のことはなんでもできる、と高校生ながらに思いました」

――弟子入り後、西岡棟梁からどのように仕事を教わりましたか。

「西岡棟梁から手取り足取り教わったことは一度もありません。ただ一度『かんな』を引いて見せ、かんなくずはこういうものだと言われたことがあっただけです。私はそのかんなくずを部屋の窓に貼り、それを見ながら自分でも同じく出せるように刃物を研ぎ、修業しました」

「人を『育てる』というのは大きな間違いです。必要なのは『育つ環境をつくる』ということだけ。上に立つ者は自分の仕事を見せつけ、弟子からああなりたいと思わせることです。人によっては『こうやってこうやれ』『おれはこうやるんだ』と教えることがありますが、そうすると反発が起きる。教えるのではなく、うまく理解させていくのがリーダーに必要ではないでしょうか」

――弟子たちの尊敬を集めることは簡単ではありません。どのように心がけてきましたか。

「一つは弟子たちと同じ屋根の下で生活し、一緒に食事をすることです。職場で顔を合わせるだけで、終わったらバラバラになるようでは難しいでしょう。鵤工舎を立ち上げる前、西岡棟梁の代理で奈良の法輪寺の現場棟梁になったときには、仕事の後で職人たちが私の自宅によく酒を飲みに来たものです」

「仕事だけの関係では職人たちは私の言うことを聞いてくれません。あるとき工期が厳しくなり、真冬の雪が降るなか夜中まで工事を続けたことがありました。それでもみんな喜んで仕事をしてくれました。棟梁として建物を完成させることはいつも頭から離れませんが、日常でも職人たちとつながり、みんなで何事も面白がっていなければこうした関係は築けません」

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